1月11日、台湾軍が「春節」控え軍事演習(写真/アフロ)
1月11日、台湾軍が「春節」控え軍事演習(写真/アフロ)

 防衛費増額に必要な財源をめぐる議論が熱を帯びている。そもそも、なぜ増税してまで防衛力の増強が必要なのか。昨年12月に閣議決定された安保関連3文書のひとつ、国家安全保障戦略で筆頭に挙げられたのは、中国の脅威である。そこで「中国は、台湾について平和的統一の方針は堅持しつつも、武力行使の可能性を否定していない」と指摘された。そんな折に著名な米国のシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)が今年1月9日に公表した台湾有事を想定した机上演習の報告書が波紋を広げている。「日米同盟が日本を戦争に引きずり込んでいる」という意見もある。中台関係の専門家はこの報告書をどう読んだのか。防衛省防衛研究所の門間理良地域研究部長に聞いた。

【写真】台湾で行われた緊迫感あふれる軍事演習

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 CSISの机上演習は次のようなものだ。

 2026年「Dデイ」――中国人民解放軍は台湾本島への進攻を開始した。米国は即時介入を決定。しかし、人民解放軍の膨大なミサイル攻撃によって台湾の空軍と海軍はわずか数時間で壊滅してしまう。この戦いで要となったのが日本の存在だ。在日米軍基地からの兵力が人民解放軍を押し戻してゆく。自衛隊も参戦。最終的に台湾は防衛を果たす――。

というのが「基本シナリオ」に基づく机上演習の結果である。

 この内容について、門間部長は「私は机上演習の専門家ではありませんが」と前置きしたうえで、首をかしげた。

「台湾有事の際、日本の役割として、われわれがまず思い浮かべるのは『後方支援』です。ところがCSISのシナリオには、机上演習を複雑化するのを避けるためかもしれませんが、後方支援が盛り込んだものがありません。そこに違和感を覚えました」

■「これはもう日本有事です」

 日本は世界で最も多くの米軍基地が置かれた国である。

「国内には主に沖縄県に米軍基地があり、台湾有事で大きな役割を果たすと考えられますが、そのほかにも、米海軍佐世保基地(長崎県)、米海兵隊岩国航空基地(山口県)、米海軍横須賀基地(神奈川県)などから米軍が台湾へ向かうこと想定されます。情勢が集団的自衛権の行使が認められる『存立危機事態』と認定されれば、戦闘地域でも日本は水や食料、燃料などを米軍に支援できますし、日本に後送された傷病兵の診療などの衛生業務も行います」

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自衛隊の参戦について報告書では…