1月11日、台湾軍が「春節」控え軍事演習(写真/アフロ)
1月11日、台湾軍が「春節」控え軍事演習(写真/アフロ)

 本来であれば、まずその是非が問われるはずだ。

「ところが、今回の机上演習では後方支援の部分は省略されて、米台日が連合軍のようなかたちで人民解放軍と戦っている。そして日本は26隻の艦艇を失うという結果になっています(基本シナリオの場合)」

 CSISの報告書には自衛隊の参戦について、こう書かれている。

<専門家との議論により、日本の自衛隊基地または在日米軍基地が攻撃された場合にのみ、日本が参戦する可能性が最も高いと判定され、この仮定はほとんどの演習で採用された>

 報告書によると、当初、中国は日本を戦争に巻き込むことに慎重な姿勢を見せていた。しかし、在日米軍基地からの攻撃に苦しめられた中国は日本国内の基地への攻撃を決定する。その結果、日米の航空機数百機が地上で破壊される。そして、生き残った自衛隊が反撃を開始する、という流れだ。

 しかし、ここでまた門間部長は疑問を呈する。

「でも、そうなったら、台湾有事というより、もう日本有事ですよ。その場合、自衛隊が反撃して戦うのは台湾本島付近ではなく東シナ海から日本にかけての地域でしょう。26年に長射程のスタンド・オフ・ミサイルを保有していると仮定すれば、それで敵基地を攻撃するなどの戦闘になると思います。日本本土が攻撃されたら、日本防衛が自衛隊の最重要任務になるのは当然のことです」

■なぜ今、台湾有事なのか?

 そもそも今、なぜCSISは台湾有事を想定した机上演習を行ったのか?

 報告書の冒頭には、こうある。

<中国の指導者は、台湾を中華人民共和国に統一することについてますます強硬になってきている。(中略)それは米国の国家安全保障論議の焦点になっている>

 門間部長は中国、台湾、そして米国の立場を踏まえて台湾有事の背景を説明する。

「台湾有事というのは、もともと中国が台湾を『核心的利益』ととらえていることに端を発します。日中戦争後の国共内戦で人民解放軍は中国全土を解放していったわけですが、唯一残ったのが台湾です。その後、鄧小平が『改革・開放』を成功させ、江沢民の時代になると、人民解放軍にも十分な予算が配分されるようになりました」

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