首や腰は、背骨に沿って脳からの神経が通っています。そのため、首や腰の病気に神経症状が関係する点には留意しなければいけません。痛みのほかにしびれなどの神経症状が生じやすいことが特徴です。首や腰の病気について解説します。本記事は、 2023年2月27日発売の『手術数でわかる いい病院2023』で取材した医師の協力のもと作成し、お届けします。

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■加齢による変化で起こる首と腰の病気

 首の病気は、首の骨の後ろ側にある脊柱管を通っている神経の脊髄がダメージを受ける「脊髄症」と、脊髄から首や肩、腕へと枝分かれしている神経根がダメージを受ける「神経根症」の二つに大きく分けられます。脊髄症の原因に、頸椎症、後縦靱帯骨化症(こうじゅうじんたいこっかしょう)、頸椎椎間板ヘルニアがあり、神経根症の原因に、頸椎症、頸椎椎間板ヘルニアがあります。

 腰の病気には、腰部脊柱管狭窄症、成人脊柱変形、腰椎椎間板ヘルニアなどがあります。腰椎椎間板ヘルニアは事故などの衝撃が原因になることもありますが、これらの病気のほとんどの原因は加齢による変化です。

■60代以降に起こりやすい腰部脊柱管狭窄症

 もっとも多い病気が、腰部脊柱管狭窄症です。60代以降の人に起こりやすく、潜在患者数は250万~570万人といわれています。背骨に沿って脳から通っている神経(脊髄)の通り道、脊柱管が加齢による変化で狭くなることで、神経が圧迫され、血流障害が起きて発症します。とくに腰椎の下部である4番と5番の間、5番と仙骨の間などで起こりやすいといわれます。

 主な症状は、腰痛や足のしびれ、痛みです。前かがみになると脊柱管が広くなって症状が楽になる一方で、背筋を伸ばした姿勢を続けていると痛くなる傾向があります。進行すると、陰部にかけての知覚障害やほてり感、下半身の筋力低下、尿が出づらい、尿もれといった排尿障害が出ることもあります。

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歩くと痛むが休むとおさまる、は要注意