ウィズ・コロナの社会に舵を切った岸田首相だが……
ウィズ・コロナの社会に舵を切った岸田首相だが……

 新型コロナの第8波が日本を襲っている。12日の全国の新規陽性者数は18万5千人、死者数は1日では過去最多の489人にまで上っている。後遺症に苦しむ人も増えているとされる。岸田首相は9月にコロナ感染者尾療養期間を10日から7日に短縮するなどウィズ・コロナの社会に舵を切ったが、再び疑問の声があがっている。

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 「よくなったと思ったら、コロナのウイルスが急激に増えたんです。かなりやっかいな印象です」

 こう話すのは、PCR検査に詳しい国立遺伝学研究所の川上浩一教授だ。川上教授は11月15日に37・8度の熱を出し、抗原検査の結果、コロナ陽性だった。発熱後すぐに熱は下がったが、この日から自身でPCR検査を実施し、自らの感染状況を観察した。冒頭の発言は、自分の日々のPCR検査の結果を見てのものだ。

 日本のPCR検査では、Ct値が40未満で陽性としている。Ct値は、ウイルスが多いほど、低い値が出る。

 療養1日目(15日)のPCR検査では、18・31と低いCt値(ウイルスが多い値)が出た。その後、新型コロナウイルスの増殖・拡散を防ぐとされる飲み薬「ラゲブリオ」を服用すると、2日目には31・54までCt値が上昇。3日目には28・76、4日目には33・3とCt値は30前後で推移した。

 その後、8日目は36・15、9日目は37・68とCt値が40付近にまで上昇した。しかし、10日目は28・62、11日目は24・2、12日目は28・78と再びCt値が減少した。

 ウイルスはこの後、増減を繰り返しながら、減少していったが、最終的にウイルスが検出されなくなったのは、30日目の12月14日だった(下グラフ)。

 川上教授はこう指摘する。

「Ct値30以下では周りの人に感染させるリスクがあると見ています。12日目でもウイルスが多く、政府がコロナ陽性者の療養期間を7日間に短縮したのは失敗だったのではないでしょうか。抗原検査キットを無料で配布する自治体もありますが、PCRと比較して精度が低く、Ct値25以上の陽性者を見逃すことがよくあり、『陰性』の結果が出たとしても、注意が必要です」

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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新型コロナはウイルスが体内に残り続ける?