小春さんは現在、里親家庭で暮らす里子や実子を支援する一般社団法人グローハッピー主催の「子ども会議」のファシリテーターを行っている。子ども会議では、テーマや会議の進め方を子どもたちが決める。専門家からのアドバイスをもらいながら、それぞれの願いをかなえるアイデアを対話によって生み出していく取り組みをしている。第1回の会議では、子どもたちの抑え込んでいた本音が飛び交った。
 
「『里親』を知っている人が少ない」
 
「顔を見せるのを解放してほしい」
 
「実親に会わせてほしい」
 
 児相の対応についても、厳しい意見や不満も出ていた。
 
 一方、実子からは、
 
「(里子は)家で楽しくしているけど、可哀想と言われることについてどう感じるのだろう?」
 
 といった意見もあった。小春さんは会議を通じて、自分だけじゃなく、他の里子も同じような気持ちを抱いていたことがわかった。
 
 会議では、そうして集まった本音を検討し、どう社会にポジティブに投げかけていく方法を考えた。
 
 まず、里親家庭が特別視されないためには、

「里親と里子の姓が違うことに対して色んな家族の形があることを知ってもらう」

「学校の授業で里親家庭について紹介する」
 
 といった意見が出た。いずれ子ども家庭庁の大臣に要望書として提出する予定だ。

 
■乳児院から里親家庭へ たこ焼き、たい焼きに困惑
 

 小春さんには乳児院のころの記憶が残っている。夜中、こっそり布団から抜け出し、職員の部屋に行った。昼間は、他の子どもたちの世話に手を焼いている職員をひとり占めできないからだ。
 
「みっつー(職員)は、カギを開けておいてくれました。カギを閉める人もいましたけど(笑)」(小春さん)
 
 昼間は「眠り姫」と呼ばれていた。一人の職員が5人ほどの子どもを見ていた。誰かが泣き出すと、職員は泣いている子の対応に追われる。だから、小春さんは「自分も泣きたかったけどみっつーが困っているかなと思って我慢した」。親指をくわえながら職員の手が空くのを待っていたら、そのまま眠りに落ちていた。

次のページ
本当にずっといるか不安だった