小春さんが話す。
 
「制服自由化と、社会的養護の子どもであることとは、何の関連性もありません。なのに、里子だから、という理由だけで世の中に堂々と顔を出すことができませんでした。道端で困っているお年寄りを助けたり、賞をとったりした子どもが、ふつうにテレビや新聞に出ているのに、里子には制限があります。まるで社会から自分の存在を否定されたかのような気持ちになりました」
 
 そして、小春さんは昨年10月、実親と対面して、実名で活動することの許可を得ることにした。
 
「児相には小さい頃からずっと、何度も実親に会いたいと要望してきました。それが、やっと実現しました。実の母は病気があって、前よりも進行している状態でした。だから、なるべく早く会いたかったんです。生きているうちに会えてよかったです」(小春さん)
 
 実に14年ぶりの再会した実親は、とても温かい人だった。メディアに出ることを快諾してくれた。実親はこう言って背中を押してくれたという。
 
「小春の好きなように生きてほしい」
 
 だが、3カ月後の今年1月、朝の情報番組から取材を受けた小春さんは、初めて里子としての自分の思いを、公の場で語った。その番組の放送直前に児相から、「児相の権限で実親に連絡する」と言われた。許可を得たはずなのに……。
 
 小春さんはこう話す。
 
「まだ母とは1度しか会っていませんでした。テレビという間接的な情報から私の里子としての気持ちを聞いて傷ついてしまうかもしれないし、間違った伝わり方をしてしまうかもしれない。これから関係を作っていく上で自分の口から直接伝えたかったです。実親との関係を再構築したくても、児相が間に入ることで、自分のペースで進めることが難しくなってしまうのではないかと不安になりました。
 
 児相は、里子の自由を制限するのではなく、一人ひとりの思いや願いを聞いて、子どものペースに合わせてサポートしてくれたらいいなと思います。措置の内容や実親との関係の進め方の希望は一人一人違うと思います。まずは子どもの声に耳を傾けてほしいです」

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子ども会議で本音言い合う