お笑いトリオ「インスタントジョンソン」の、じゃいさん
お笑いトリオ「インスタントジョンソン」の、じゃいさん

 競馬や麻雀に強い芸人として知られるお笑いトリオ「インスタントジョンソン」の、じゃいさん。競馬では、6410万円の払い戻しを受けた後に確定申告を行ったが、数千万円の追徴課税を請求され、“破産”したことをYouTubeで報告して話題になった。だが、その後も競馬で9千万円超を取り戻した。なぜそこまで勝てるのか? 聞くと、勝つためのメンタルを身につけることだという。それは仕事や恋愛など、あらゆる場面でも同じだというのだが。

【独自アンケート】最も珍しいと思う競走馬の名前の1位は

*  *  *

――最初に競馬の税金問題について。税制に不備があるとして、異議申し立てもし、弁護士費用の寄付も集まっていると聞いています。その上で新たな提言もされると。

「今の税制は、仮に8千万円分の馬券を購入し、合計で1億円の払い戻しがあったとします。そうすると、もうけは2千万円です。でも、負けた分の8千万円は考慮されずに、勝った分の1億円に税金がかかって、結果的に2千万円が徴収されます。これでは勝った意味がないです。競馬を続けること自体に意味がなくなります。そもそも競馬の売り上げの25%は、JRAと国庫に納められているんです。国庫には年間約3千億円強を納めているので、競馬ファンはそれだけでも大きく貢献しているわけです。この仕組みを競馬ファンは『二重課税』と呼んで疑問視しています。これは、70年以上前にできた法律に当てはめて、こういう形になっているんです。競馬ファンを代表するというわけではないですが、この法律を改正してもらえるように国会議員らに働きかけているところです」

――6月に“破産”を報告しましたが、その2カ月後には、また競馬で見事当てて、9370万円を取り戻しました。自著の『稼ぐメンタル ギャンブルで勝ち続ける「ブレない」心の作り方』(KADOKAEA)では、ギャンブルに限らず、稼ぐことにおいて、勝つためにはメンタルが重要だと書いています。

「長年ギャンブルをやってきた経験から言えるのは、メンタルは稼ぐために一番重要だということです。ビジネスや恋愛においても、色々な意味で勝ちを求めていくなら、メンタルは重要なファクターになると思います。勝ったり負けたりした時のメンタルだったり、スランプで調子が悪い時のメンタルだったりが、人の行動に影響を及ぼすと思いますが、ブレずに行動は変えない方がいいんです。恋愛に例えれば、仮に異性から振られて落ち込んで、最悪、男性不信や女性不信になってしまうようなことがあるかもしれません。でも、その時の相手のような人ばかりじゃないからと、考えをすぐに変えて気持ちをコントロールした方がいい方向に進むと思うんです」

――メンタルを鍛えることは難しそうです。

「感情は抑えきれないものがありますよね。勝ちを追い求めることによって、メンタルをコントロールできなくなってしまうから難しいんです。僕は20代のころとか、負けてムカついて、物に当たったり、荒れたりしたこともありました。ただ、負けを積み重ねていくうちに、感情の乱れが負けにつながっていることがわかってきたんです」

――感情が乱れなくなったら、勝てるようになってきたんでしょうか。

「そうですね。仮に負けたとしても、後に引きずりません。特に麻雀やポーカーなどの対人勝負では、感情が大きく影響すると思います。麻雀は、弱気になると臆病になり、勝負すべきところでできなくなるケースがあります。そこは決めたら、それで勝負する。仮にそれでその勝負に負けたとしても、後悔せず引きずらない。『別の牌を切っておけばよかった』とか思わない。弱気とは別に、やけになってしまうパターンもあります。それも負けにつながります」

――でも、何かを選択しなければならない場面は、どっちがいいのか迷います。どうしたらいいのでしょうか。

「一喜一憂しながら選んだ方が楽しかったりもするんですよね。僕は、ほぼ感情のないAIのように判断します。競馬も麻雀と同じように、決断したら後悔しないことです。どの馬にするかを決めたら、あとで『ああ、こっちにすればよかった』と後悔しなくていいんです。そこで引きずると、前はこっちだったから、次はあっちにしようとか、両方にしておこう、とかなって判断がブレていきます。負けたとしても、あの選択で間違っていなかったんだ、と思えるぐらいでいる方がいいです。結局は、いかに先を読むかなんです。投資においても、先を読める人ほど、借金してでもお金をかけて、最終的な見返りで得をしますよね。ただ、目の前のものだけしか見ていなかったら、そのお金がもったいないとか、損したらどうしようと弱気になってしまう。だから、その道のパイオニアの人たちは、ギャンブルそのものだと思うんです。誰もやってこなかったことをするには、勝算と自信を持っていないとできません。もちろん成功させるために、準備も緻密(ちみつ)にやらなければなりませんけどね」

――相当な自信を持ち合わせていた方がいいのですね。

「そうです。だから、負けも想定しておきます。すべての結果を想定内にしておくと、割と何が起きても冷静に対応できるんです。極端ですが、僕は、妻の浮気とかも含めて想定していますから(笑)。もちろん、疑っているわけではなく、ただ可能性として考慮しているだけです。予想外のことが起きたときに、パニックならないために」

――メンタルを整えるために実践していることはありますか。

「自分を客観的にみるために、もう1人の自分を頭の中に宿しています。僕は、そのもう1人の自分を『リトルじゃい』と呼んでいます(笑)。はたから見る他人の姿はよく見えるけれど、人は自分のことになるとわからなくなってしまう。でも、もう1人の自分が自分を見ていると、かっこ悪いことができなくなります。かっこいい生き方をしたいと意識して、いつも客観的に見ることも、勝ちにつながっていると思います。簡単にはできないかもしれないけど、意識するだけでも、何もしないのとではずいぶん違う気がします」

――追徴課税を払うことになって、その後、9370万円を当てた時は、ご家族はどんな反応でしたか。

「実は、8月に9370万円を当てたことを妻に内緒にしていたんですよ。破産動画を配信した後だったので、発表したくなかったんです。でも、知人とオンラインサロンをやろうという話をしていて、そこで主催者からぜひ発表してほしいと言われました。夢を与えられる話かもしれないし、ならばということで発表したんです。税務署からの追徴課税は、妻と親に借金して払ったので、高額配当がバレないように返済していました。でも、返済額がちょっと大きかったので、妻から『なんなの、気持ち悪いんだけど』と言われていました。その後にネット記事が出て、妻にもばれてブチギレてました。2カ月黙っていたので、沸騰するくらい爆発して、溶けるのかってくらい。怖くて3日ほどは、こっそり家に帰って妻と鉢合わせないようにしていました」

――ギャンブルによって身を滅ぼす人が多いなかで、じゃいさんの場合は稼げているのですが、この差についてはどう思いますか。

「ギャンブルは運だという人がいます。競馬は、競馬新聞を片手に一生懸命に予想したのに外れたり、一方で、とりあえず誕生日とかの番号を買った人が当たったりする。そうなると努力しても報われず、運が大きいと思いがちです。ただ、それは一時的なもので、5~10年続けていると、予想をしてきた人としないで適当に買っている人との差は明確に出てくると思います。麻雀は、実力と運が7対3だとよく言われます。だから、どんなに下手な人でも勝てることがあるんです。そこだけを捉えると運というのももちろんあります」

――運を味方につけるためにはどうすればいいでしょう。

「運については解明できません。だけど、過去にこんなことがありました。ニッチェ(お笑い女性コンビ)の2人のうち、1人は出産して、1人が結婚したときがありました。たまたまライブでニッチェに会って、そのときご祝儀を渡したんです。そうしたら、その週は競馬は全然当たっていなかったのに、ご祝儀を渡した5分後に10倍になって返ってきました。たまたまかもしれませんけど、徳を積んだ方が勝てるんだ、と思えれば、日ごろからいい行いをするようになるし、それによって周囲から好感を持たれるようになるとか、そういう相乗効果が生まれてくると思います。もちろん、徳を積むことが運につながるかどうかはわかりませんけど、そう思っていた方が、人生としてはうまくいく気がします」

(聞き手/AERA dot.編集部 岩下明日香)

■じゃい 1972年神奈川県生まれ。「おつかれちゃーん」でおなじみのお笑いトリオ「インスタントジョンソン」のボケ。パチプロだった祖父の遺伝かギャンブル全般に強く、2009年にはギャンブルでためた5千万円でマンションを購入。また、WIN5で、12年に3775万円、14年に4432万円、20年に6410万円、22年8月に9370万円を払い戻している。現在は、チャンネル登録者数17万人を超えるYouTubeチャンネル「じゃいちゅ~ぶ」などで競馬や麻雀などの話題を中心に発信している。著書に、『勝ち方がわかる 馬券の教科書』(池田書店)、『勝てる馬券の買い方』『図解 博才が必ず身に付くギャンブルのセオリー 最強ギャンブラー芸人じゃいばかりがなぜ儲かるのか?』(ともに、ガイドワークス)などがある。