二階氏の地元、和歌山県では、知事選の真っ最中だ。選挙戦前の自民党の推薦候補者選びでは、水面下で世耕氏と争っていた。最終的に、二階氏が推した候補に決まり、健在ぶりをみせつけた。

「和歌山は二階先生と世耕氏の地盤だ。知事選では世耕氏が別の候補を擁立してそれで決まりかと思ったら、二階先生がひっくり返しました。まさに、政治闘争に強いイメージを印象付けたんです。菅氏が首相の座につけたのは、二階先生が流れを作り、他の派閥を追随させたから。あっと驚くような策に打って出ることもあり得ます」

 と二階派の議員は期待する。

「今年8月の和歌山市長選でした。現職市長の圧勝の声が大きく、投票前から『バンザイ』の段どりを市長陣営と、マスコミとの間で打ち合わせていたんです。その時点では『二階先生は来ません』ということで、二階先生の立ち位置はなかった。それが一部メディアで『二階氏がバンザイを欠席予定』と報じられると、当日には突然、二階先生が現れ、しっかりと一番いいポジションで写真に写っていた。コロナ感染が伝えられた二階先生だが、県知事選の初日、岸本氏の応援にも駆け付けた。それも二階先生が闘争に強い、政局を見る感覚の鋭さです」(前出・二階派の議員)

 二階派には、首相候補はいないとみられており、二階氏がどういうタイミングで誰を推すのかによって大きく情勢が変わるという。それどころか、自民党幹事長の最長在任記録を持つ二階氏は党内を知り尽くしている。

 巧みに「岸田首相の後」を早める展開に持ち込むこともありうるとの声が党内からは聞こえる。

「菅氏を押し上げた時のように、二階氏が早めに動いて特定の候補に乗る可能性はある。かつて田中角栄から教えを受けた二階氏ですから、(田中派の流れを汲む)茂木氏を推してもおかしくない。混迷する政局でにらみ合いが続き、だれもが手を上げるのが遅くなる展開になれば、野田氏を担ぐなどびっくりするような一手も考えられる」

政治闘争なら党内に右に出る人はいない。二階俊博元幹事長
政治闘争なら党内に右に出る人はいない。二階俊博元幹事長
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「二階マジック」が決め手に