「自分の中で30歳ってもっと動けないイメージでしたけど全然そんなこともないです。なので年齢での心境の変化っていうのはあまりないかと思います。空手では毎回トーナメントだったし、日本でキックボクシングをやっていた時も防衛戦は経験したことがなかったので今回が初めてです。けど、自分の中ではチャレンジという気持ちでいるので、心境としては本当に何も変わらないです」

 現在はシンガポールで練習に没頭し、そうでない時間は家族と過ごす。SNSを積極的に活用するといった自己アピールに長けたタイプではないが、雑音に惑わされずファイターであることに集中している。

「自分がチャンピオンになって守る側の試合ですけど、守るというよりどんどん攻めていきたいと思います。ONEに来てからKOがないので、しっかり倒し切るっていうのも意識して。スパーリングでも70kgとか77kgの階級が上のタイ人選手とやってしっかり効かせられる、倒せるぐらいまで仕上げてきました」

 目指すのは勝利、そしてKO。だが同時に秋元が戦う上で意識していることが一つある。

「KOっていうのは格闘技で盛り上がる一番の要素だと思うんですけど、やっぱり相手の心を折るだったり“もう何回やっても勝てる気がしない”って思わせるような試合をしたいっていうのが自分の中ではあります。判定を聞く前から負けを確信させるぐらいの試合というか。それとプラスアルファでKOできたらいいなっていうのはいつも思ってます」

 相手の気持ちを折り、敵わないと心底思わせる、そんな勝利を秋元は目指している。

「自分で攻撃をして足や手にダメージを負ったのはありますけど、相手に攻撃されてのダメージっていうのはONEに来てからほぼないです。できることならフルラウンド、相手の攻撃は一発ももらわず、自分は当てて倒すっていうのをやりたいです」

 相手の攻撃を防いでダメージを最小限に押さえ、自身の攻撃を当てて完封する――そこに秋元の凄味がある。

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相手は400戦以上のつわもの