ツイッター社は今後どうなるのか(写真/アフロ)
ツイッター社は今後どうなるのか(写真/アフロ)

 11月9日、フェイスブックを運営するメタは社員の約13%に相当する1万1000人以上を削減すると発表した。ツイッターやアマゾンなど、SNSやネット通販で身近なサービスを提供してきた巨大IT企業の間で、解雇や新規雇用抑制の動きが広がりを見せている。IT業界で何が起こっているのか、ITジャーナリストの西田宗千佳さんに聞いた。

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 今、巨大IT企業は米国経済が減速するかもしれないという強い懸念に初めて直面していると、西田さんは言う。

「ここ10年ほど、米テクノロジー企業は大きく成長してきました。IT企業の株価上昇が米国市場の株価を牽引してきたわけです。それはITバブルというほどではありませんでしたが、着実にアメリカに好景気をもたらしてきた。ところがこの1年くらいはテック企業の業績が、タイヤがスローパンクして空気が抜けるようにゆっくりとしぼんできた」

 その背景にあるのが記録的水準のインフレだ。

「テック企業が集まるシリコンバレーの周辺、例えばサンフランシスコで暮らすのは物価上昇で大変です。年収4千万円のビッグテック企業に勤める社員が貴族みたいな生活ができるかというと、ぜんぜんそんなことはない。年収1千数百万円とかだと、ぎりぎり生活できるレベルです」

 これまでは物価の上昇にともなって賃金が増える経済の好循環が続いてきたが、

「さすがにもう許容範囲を超えてしまった、という話が出てきた。すると今後は物やサービスが余ることが予測される。売り上げを伸ばすことが厳しくなってくるので、広告費が抑えられる。なので、物やサービスだけでなく、広告費をベースに運営してきたIT企業も苦しくなる」

 と西田さんは説明する。

 米企業は雇用調整として日本よりたやすく社員を解雇するイメージがある。

「でも、なぜ、そうできるのかというと、単純な話、解雇時にたくさん支払うからです。どんどん雇って、仕事のできない人は解雇して、優秀な人を残す。でも、将来的に収益が上がる見込みがないと、大量に人を雇うことはできない。解雇するときに多額の費用がかかりますから。なので、まず、新規雇用を一時停止した。それがビッグテックの一つ、アマゾンです」

メタの次はグーグルか

 アマゾンの社員構成はビッグテック企業のなかでも特殊で、ハイクラスのエンジニアとフルフィルメント(配送)センターの従業員に分かれるという。

「エンジニアを雇うには一人当たりのコストがものすごくかかりますが、人員の割合としてはそれほど多くない。一方、フルフィルメントセンターにはものすごい数の人が働いている。去年までは人手不足だったので、日本の感覚でいえば月給30万円くらいの金額を支払って比較的シンプルな仕事をしてもらっていた。ところが今年に入ってからアマゾンは雇用のブレーキを踏むことになった」

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キラキラ社員はいらない?