広島・田中広輔(左)と中日・田島慎二(右)(写真提供・広島東洋カープ/中日ドラゴンズ)
広島・田中広輔(左)と中日・田島慎二(右)(写真提供・広島東洋カープ/中日ドラゴンズ)

 日本シリーズも終了し、すっかりストーブリーグの季節となったプロ野球戦力外の通告期間が1日に終了し、所属チームから戦力外となった選手は移籍先を探す時期でもある。一方でこのオフには何とか自由契約は逃れたものの、チーム内で立場が危うくなっている選手も存在している。今回はそんな2023年が正念場となりそうな、崖っぷちの選手に焦点を当ててみたいと思う。

【写真】パ・リーグの“崖っぷち”の選手の一人がこちら

 セ・リーグ三連覇の後、4年連続でBクラスに沈んでいる広島で立場が危うくなっているのが野村祐輔と田中広輔の2人だ。野村はプロ入り1年目の2012年に新人王を受賞すると、2016年には16勝をマークして最多勝にも輝くなど先発投手陣の一角として長く活躍。しかし2018年以降は年々成績が下降し、昨年はプロ入り後初となるシーズン0勝に終わっている。

 今年は6月に約2年ぶりとなる一軍勝利をマークしたものの、9試合に登板して2勝3敗、防御率5.23と不本意な成績に終わった。スライダー、カットボール、ツーシームなど横に滑る変化球を駆使した投球術には定評があるが、若いころに比べると明らかにボールの勢いが落ちており、ごまかしきれなくなっている印象が強い。何か新たな武器を身につけることができなければ、復活は難しいのが現状だ。

 一方の田中も早くからショートのレギュラーに定着し、三連覇中の3シーズンはいずれも全試合に出場するなど不動のリードオフマンとして活躍。しかしここ数年は膝の故障もあって低迷し、今年は41試合の出場でわずか8安打とプロ入り後最低の成績に終わった。心配なのは二軍でも打率.246と結果を残すことができていない点だ。

 定位置だったショートは小園海斗がレギュラーをつかんでいるものの、今年はサードで出場することの多かった坂倉将吾が来季は捕手に専念すると言われているだけに、まだまだ田中の安定した守備は貴重である。何とか打撃とスピードを取り戻して、再び一軍の内野陣を支える存在になってもらいたい。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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パ・リーグにも“崖っぷち”の選手