「篤志家」という言葉がある。一般的には、社会奉仕や慈善事業に熱心な人を意味する。だが、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)では、かなり違う意味で使われているようだ。
【資料】旧統一教会が信者の経済力などをランクづけする「インビテーションカード」
「教会内では、『篤志家』とか、『時の人』とか言いますが、大金持ち、億単位で寄付してくれそうな人、のことを指します。教会のマニュアル、インビテーションカードでは経済力が最高のSランク。3千万円以上の貯金がある、多宝塔を1千万円以上で買える人、です」
旧統一教会に入って20年以上という現役信者はそう話す。
旧統一教会が訴えられたある民事裁判では、
「篤志家、時の人に会えるように、文鮮明の写真の前で祈り、霊感商法の活動に行く」
と元信者が答えている記録も残っている。
「うちの父は2億円くらい、旧統一教会に持っていかれました。教会の幹部に『アメリカに行くぞ』と誘われて、飛行機に乗って連れていかれたのは旧統一教会の創始者、文鮮明がいた大豪邸のイーストガーデン。そこで父は文鮮明と面会したのですが、『なんでカネを持ってこないのだ』と恫喝(どうかつ)された。文鮮明との面会、写真を撮るには300万円ということだったそうです。帰国してすぐに300万円を払っていた」
と話すのは、関西地方に住む30代の女性Aさん。
父は旧統一教会内では「篤志家」として知られる存在だった。不動産関連の仕事を手掛け、事業を成功させていた。
だが、Aさんが幼いころに旧統一教会に勧誘され、教義「原理講論」に魅了されたのがきっかけで、信者になったという。
父は、多額の現金、資産を保有していたが、旧統一教会の求めで次々に現金化して寄付した。わかっているだけで、
▽壺(4点) 1千万円
▽龍の壺(2点) 1千万円
▽弥勒菩薩像 300万円
▽木造弥勒菩薩像 70万円
▽多宝塔 6600万円
と、これだけでざっと計9千万円近くになる。
「高麗人参茶も一度に40個、50個と買わされていた」
とAさんは言う。その手口は、
「霊界が納得していないから不幸が起こる。高麗人参茶を今、買ったほうがいい」
などという内容で、まさに霊感商法そのものだ。