山口組の篠田建市(通称・司忍)組長
山口組の篠田建市(通称・司忍)組長

「いけだー!」。怒号とともに暴力団組長を狙って刃物を振り回す男と、それを止めようとする男との乱闘。“ヤクザ映画”の一場面と見まがうような事件が、白昼の理髪店内で起きた。さらに数時間後の夜9時過ぎには、近くのマンション駐車場で数発の銃声が……。国内最大の指定暴力団山口組の分裂に端を発する、岡山を舞台にした一連の抗争とみられるが、元山口組顧問弁護士は「これが最終戦争になるかもしれない」との見方を示す。事件の流れ、背景を追った。

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 10月26日午後1時過ぎ、岡山市北区内の理髪店で、指定暴力団池田組の池田孝志組長が散髪中、突然店内に3人組とみられる男が乱入し、組長の名前を叫びながら刃物を持って襲撃。池田組長の警護役の組員ら2人と乱闘となり、組員2人が手に軽傷、刃物を持った男は頭部に大けがをした。池田組長は無事だった。

 池田組長を狙ってきたのは、六代目山口組傘下の五代目山健組組員の吉永淳容疑者(50)。乱闘後、頭から血を流し、動けなくなっているところを駆けつけた警察官に殺人未遂容疑で逮捕された。他の2人は逃走中とみられる。

 捜査関係者によると、吉永容疑者は池田組長が理髪店に入ってから約10分後、催涙スプレーをまきながら「いけだー」などと声をあげ、刃物を手に入ってきた。そこに、吉永容疑者の仲間も加勢したが、あらかじめ警戒していた池田組長側の7、8人の警護役が食い止めた。

「(警護役は)格闘家ともいわれる屈強なメンツで、返り討ちにあった。吉永容疑者は額が切れてかなりのケガ。もみ合うなか、池田組長は他の組員に守られ、無事逃げた」(捜査関係者)

 しかし、六代目山口組の襲撃はこれにとどまらなかった。

 この日の夜9時15分ころ、池田組長の自宅のマンション駐車場に止めてあった車に向け、数発が発砲された。約10分後、警察に「自分が撃った」と拳銃を持って出頭したのは、先の事件と同様に六代目山口組傘下の五代目山健組組員、福岡一彦容疑者(57)。銃刀法違反の疑いで逮捕された。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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資金力豊富な池田組長の存在感が増した