「『こ』にあるように、学習の悩みや迷いがあるならば、塾の先生にすぐ相談すべきです。わが子のことなんですから、そこはずぶとくいけばいいんです。親身になってくれる先生をみつけたら、そこからいろいろと相談して徐々に距離感を縮めていくといいでしょう」(吉田氏)

 一方で、「塾に預けているのだから大丈夫、という塾への丸投げはダメです」と吉田氏は忠告する。

「子どもたちは雨の日でも風の日でも、けがをしていても頑張って塾に来ます。そんなわが子の頑張りに関心を持ってほしいんです」

 塾から帰宅した子どもに、今日はどんなことをやったの?と聞いてみる。そして、子どもが話す勉強の内容がわからなくても、相づちを打ってやることが大切だという。そうした親からの声掛けは、子どものやる気として還ってくる。

 もうひとつ、吉田氏が考える「塾の価値」として過去問の豊富さを挙げる。市販している過去問題集ではなく、学校から入手する「現物の過去問」だ。一般の受験生が何年分も手に入れることは難しく、現物の入手は塾の努力、塾と学校の関係性の強さが表れるという。

 近年の中学入試は、特に難関校で記述式の問題が増えている。国語の記述対策には文字数の把握が必須であり、実際の解答欄の大きさから、目安となる字数を割り出す必要がある。こうした対策も「現物」があればこそ可能になる。

 吉田氏は、馬渕教室時代には20年分の過去問を3回ずつ解かせた生徒もいたという。学校側は数年分しか過去問を保管していないケースも多いので、古い過去問の現物を持っている塾は、長期間にわたって入試分析をした上で対策を練っているという証明にもなる。

 「中学受験は塾と保護者それぞれが役割をもって並走することが大事です。そこで双方がどれだけ深い連携が取れるかが“戦略の要”と言っても過言ではありません」(吉田氏)

 (AERA dot.編集部 市川綾子)

※次回は<「合格実績のからくり」と「高学年の転塾」>について紹介します。