郡司恭子アナ(撮影/加藤夏子)
郡司恭子アナ(撮影/加藤夏子)

 日本初となるアナウンサーの声から生まれたアパレルブランドということで、細かいデザインにまで“こだわり”が詰まっている。

日本テレビには20代から60代まで幅広い年齢層のアナウンサーがいるので、現場で実際に試着してもらって、丈感や着心地を確認してもらいました。デザインには、アナウンサーならではの視点も反映されています。たとえば、私たちは原稿を読む時、手首が机に触れることが多いのですが、袖口のボタンが机にぶつかってカチャカチャ鳴る音をマイクが拾ってしまうことがあるので、衣装選びでは袖口のデザインやボタンの位置に気をつかいます。そこで、アウディーレの洋服では、ボタンは見えるけれど机に当たらない位置にデザインするなど工夫をしました。リモートワークやPC作業が当たり前の現代に、この工夫を喜んでくださる方もいるかもと思って」

さらに、女性アナウンサーならではの視点も生かされている。

「女性の場合、ランジェリーの肩ヒモが見えてしまうと、だらしない印象になってしまいます。最初はきれいに着ていても、動くとヒモが見えてしまうこともあります。美しく着こなせるように、衣服の中に『スリップ止め』をつけて、ランジェリーのヒモを中でパチンと止めることができるような仕様にしています。これは女性アナウンサーの意見から生まれたアイデアです」

 こういったこだわりは、世の女性たちと共感できるはずだとデザインに落とし込んだ。

 ブランドの発表記者会見の報道では、郡司アナはチームの「代表」とされていたが、実際はどのようにメンバーを引っ張っているのか。

「私自身は代表という意識はなくて、あくまでも提案者という立ち位置です。新しくチームを作ってというよりも、アナウンス部全体の事業としてとらえています。日常的に会議に出ているアナウンサーは15人くらいでしょうか。出席はできないけれども、関わりたいと思って手を挙げてくれるアナウンサーもいます。会議に出席できないアナウンサーには、部内で私の方から声をかけて意見をもらうこともあります。実際に声を集めたアナウンサーは25人くらいになると思います」

 これだけ注目を集める事業を立ち上げ、アナウンス部全体を巻き込んでリーダーシップを発揮する郡司アナ。もしかして、起業家に向いているのでは?

「いえいえ、今回は私がアナウンサーだったからこそ、生み出せた事業です。私のアイデンティティーは、やっぱりアナウンサーなんです」

 そう語る郡司アナの目の輝きは、各界で活躍する女性リーダーに共通する“光り”が宿っているように見えた。(AERA dot.編集部・上田耕司)

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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