カナダのトロント市内のフードバンクに並ぶエッタ・ンさん(中国版ツイッター「微博」の投稿より)
カナダのトロント市内のフードバンクに並ぶエッタ・ンさん(中国版ツイッター「微博」の投稿より)

「エッタさんはジャッキーと人気女優エレイン・ン(呉綺莉)の不倫の末に生まれた子どもで、2015年に同性愛者であることをカミングアウトしています。ジャッキーは認知していません。一方、実子であるジェイシー・チャンさんはエッタさんのホームレス報道と同じ時期に、高級車ロールス・ロイスを運転する姿をインスタグラムにアップしていたんです。2014年に麻薬の使用に絡んで北京で逮捕されたことで有名なジェイシーさんですが、ジャッキーは彼には多大な資金援助をしていたのに、エッタさんには一切、経済的援助もしていない。そのため、今回の娘の報道では、中国のネットユーザーから同情の声が寄せられていると同時に、ジャッキーへの批判も多く集まっています」(同)

■日本でもすっかり嫌われ者に

 中国ではジャッキーの私生活でのスキャンダルが多い一方で、香港や台湾では彼の政治的立場を巡る批判が多い。

 ジャッキーは2012年以降、中国の国政助言機関である人民政治協商会議に選出され、昨年には共産党への入党を希望していると公言。2019年の香港民主化デモの際には、中国政府の逃亡犯条例改正や国家安全法への支持をいち早く表明し、香港市民から“共産党の犬”との批判を受け、裏切り者のイメージがすっかり定着してしまった。8月には中国・杭州市内に8億円の高級マンションを購入していたことが明らかになり、老後は中国に定住するのではとも言われている。

「日本でも近年、ジャッキーはすっかり嫌われ者になってしまいました。以前は日本人のファンも多かったため、80~90年代の彼は大の親日家でした。しかし、2000年代に入ると、ジャッキーの映画は巨大なマーケットである大陸を意識した作品が増え、中国人俳優を積極的に起用したり、中国を舞台にした映画ばかりが製作されるようになりました。1989年の天安門事件の際には、中国政府を批判し学生たちを支持するチャリティーイベントにも参加していたこともあるのに、今では中国政府のスポークスマンになってしまった。息子が麻薬で中国当局に逮捕された一件も、彼の親中を加速させる大きなきっかけとなりました。いわば息子は“人質”のような存在になったのです」(広瀬氏)

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「もともと思想信条や理念はない」