阪神の高山俊
阪神の高山俊

 CSファイナルステージでリーグ連覇を飾ったヤクルト相手に、敵地・神宮球場で下克上を狙う阪神。矢野燿大監督が今季限りで退任することが発表されており、有終の美を飾りたい。

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 来年は岡田彰布氏が新監督に就任する。2004年から阪神の監督を5年間務め、05年にリーグ優勝。08年も首位快走し、一時は2位に最大13ゲーム差をつけていたが、新井貴浩が北京五輪で腰痛の症状を悪化。腰椎の疲労骨折で戦線離脱すると、主砲を欠いたチームは驚異的な追い上げをみせる巨人に逆転優勝を許し、岡田氏はV逸の責任を取って同年限りで辞任した。悔しい終わり方になったが、名将であることは間違いない。15年ぶりの監督復帰に、阪神ファンのボルテージが上がる。

 スポーツ紙デスクは「優勝から遠ざかっているが、阪神は決して弱いチームではない。投手力はリーグ屈指。カギを握るのは野手陣です。守備力を強化して、得点を取れる打線を構築しないと。矢野政権でくすぶっていた選手にもチャンスはある。このまま終わってほしくないのが、高山俊ですね。天才的な打撃センスを持っているが、近年は完全に輝きを失っている。岡田監督の下で復活できるか注目されます」と期待を込める。

 高山は阪神の中心選手になるはずだった。明大で六大学最多の通算131安打をマーク。プロ野球界でも活躍した高田繁の129安打、高橋由伸の119安打、岡田氏の117安打、鳥谷敬の115安打を上回る記録で、阪神にドラフト1位で入団する。1年目の16年に134試合出場で打率.275、8本塁打、65打点をマークして新人王を獲得。幸先良いスタートを切ったが、規定打席に到達したのはこのシーズンのみ。攻守で精彩を欠くようになり、21年は1軍出場なしに終わった。今季も38試合出場で打率.189、0本塁打と結果を残せず、6月下旬以降はファーム暮らしが続いた。

 置かれた立場は苦しい。だが、チャンスがないわけではない。今年は矢野監督の方針で佐藤輝明を三塁、右翼、大山悠輔を一塁、三塁、左翼、右翼と複数のポジションで起用していたが、岡田氏は佐藤を三塁、大山を一塁で固定する可能性が高い。外野の3枠で中堅・近本光司は不動のレギュラーだが、両翼は新外国人選手を含めて熾烈な争いが繰り広げられることが予想される。高山も結果を残せば、レギュラー返り咲きの道を切り拓ける。

 在阪のスポーツ紙記者は「高山の持ち味は卓越したミート能力です。ボール球を振る悪癖を指摘されることが多いですが、ストライクゾーンが広い打者ともいえる。広島・西川龍馬のように『悪球打ち』でも結果を残せば、文句は言われなくなる。結果が出ずに打撃フォームを毎年のように変えて試行錯誤を繰り返していたが、小さくまとまってほしくない。今年の阪神は下位打線にポイントゲッターがいなかった。高山がこのポジションをつかめるか。来年はラストチャンスになると思います」と語る。

 阪神はウエスタン・リーグで2年連続優勝を飾り、今月8日にファーム日本選手権で楽天と対戦。この日は同じ時間帯に1軍でCSファーストステージ・DeNA戦が行われていた。1軍のベンチ入りメンバーから外れた高山はファーム日本選手権で「1番・左翼」でスタメン出場し、初回に右翼席へ先頭打者本塁打を放っている。試合は2-8で敗れたが、一塁ベンチが最も盛り上がったのは高山のアーチだった。来年はこの光景が甲子園で見られるか。(梅宮昌宗)