フローレンス・ナイチンゲール記章の授与式での雅子さま
フローレンス・ナイチンゲール記章の授与式での雅子さま

「ダイヤモンド・プリンセス号の場合はいかがだったのでしょうか」

【愛子さま】聡明さが表れた会見での表情

 皇后雅子さまは、苫米地則子さん(58)にそう声をかけた。苫米地さんは、世界の注目を集めた2020年2月のクルーズ船「ダイアモンドプリンセス号」で新型コロナが拡大した際に、船内で活動した救護班の総括を務めた看護師だ。

 8月10日、優れた功績のあった世界各国の看護師らに贈られるフローレンス・ナイチンゲール記章の授与式が都内のホテルで行われた。コロナ禍で延期になっていたため3年ぶりの開催だった。

 日本人では、苫米地さんとパキスタンなどで保健活動を行ってきた藤田千代子さん(63)が選ばれた。

 雅子さまは、イスラム文化圏での看護活動や女性スタッフの育成に尽力したペシャワール会の藤田さんの活動に熱心に質問を重ねた。

 アフガニスタンで活動中に銃撃で命を落とした医師・中村哲さんの活動を支えてきた藤田さんは、その意思を継いで活動を続けている。過酷な現場活動に、身体を気遣ったのだろう。

 皇后雅子さまは、藤田さんにこう声をかけた。

「健康に気を付けて頑張ってください」

授与式には、日本赤十字社(日赤)の名誉総裁を務める雅子さまと、副総裁を務める秋篠宮家紀子さまと寛仁親王妃信子さま、高円宮妃久子さまも出席した。

 授与式のあとに行なわれた懇談の場で苫米地さんは、「妃殿下の方々もやはりダイヤモンド・プリンセス号に興味を示してくださいまして、質問をいただきました」

 と話し、コロナ対応の現場に対する皇室の関心の高さをうかがわせた。

 日赤と皇室の関係は深い。戦後より日赤の名誉総裁は代々の皇后が、名誉副総裁は皇族妃が務めてきた。

 日赤の始まりは、1877年の西南戦争にさかのぼる。この時に創設された負傷者の救護団体が「博愛社」だった。

 時の美子(はるこ)皇后(昭憲皇后)は、博愛社に定期的に現金を下賜する形で支援を続けている。

 まもなく博愛社は、日本赤十字社に改称。戦時に敵味方に関係なく医療活動を展開する赤十字・赤新月社連盟傘下に入った。

 皇室との関係が深まったのは、1888(明治21)年。福島県の磐梯山噴火の際、昭憲皇后が医師の派遣を命じる。それをきっかけに、世界の赤十字に先駆け、戦時以外の災害救護活動を行うようになる。さらに献血事業や医療・福祉事業を手がけ、皇室の支援を受けてきた。

次のページ