関東一時代のオコエ瑠偉
関東一時代のオコエ瑠偉

 8月6日に開幕する全国高校野球選手権。アマチュア野球全体の中でも最も注目度の高い大会であり、ドラフト候補となる選手にとっても大きなアピールの場であることは間違いない。日本の野球界において、甲子園に出場してそのままプロ入りというのが誰もが分かりやすいエリートコースと言えるだろう。

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 しかしその一方で、注目度が高いからこそ、そこでの活躍によって一気に評価が急上昇する弊害もあるのではないだろうか。特にドラフトでの評価に直結しやすいのが高校3年夏に出場したケースだが、そこで急浮上してきた選手がプロで苦しんでいるケースが多いというのもまた事実である。

 近年でそういった例が特に目立ったのが2011年である。この年の高校生候補は投手であれば武田翔太(宮崎日大)、野手であれば高橋周平(東海大甲府)が高く評価されており、ともに甲子園に出場することはできなかったが、武田はソフトバンクが、高橋は3球団が最初の入札で指名している。この2人に関しては甲子園出場という“付加価値”とは無縁だったことがよく分かるだろう。しかし、外れ1位、外れ外れ1位では松本竜也(英明→巨人1位)、川上竜平(光星学院→ヤクルト1位)、北方悠誠(唐津商→横浜1位)と3年夏の甲子園で活躍した選手が並び、この3人は揃って一軍出場を果たすことなくユニフォームを脱いでいるのだ。

 松本に関しては地方大会の時点から注目度が高かったものの、川上と北方に関してはそこまでの評価を得ていたわけではない。甲子園に出場していなければ、もう少し低い順位になっていた可能性は高いだろう。ちなみにこの年、高校からプロ入りした選手では上沢直之(専大松戸→日本ハム6位)、桑原将志(福知山成美→横浜4位)などが甲子園未出場ながらチームの主力へと成長している。

 翌2012年は藤浪晋太郎(阪神)、森友哉(西武・当時2年)のバッテリーを擁する大阪桐蔭が春夏連覇を達成しているが、この年の夏の甲子園で大きく評価を上げた選手と言えば北條史也(光星学院)になるだろう。当時の光星学院は3季連続甲子園準優勝という強豪で、前述した川上も1学年上で活躍していたが、同学年で最初に注目を集めていたのは田村龍弘(ロッテ)の方だった。しかし2年秋の新チームから北條の活躍がより目立つようになり、3年夏の甲子園では4本塁打をマークする大活躍を見せて評価を上げたのだ。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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