※アエラムック『大学院・通信制大学2023』より
撮影/加藤夏子(写真映像部) ヘアメイク/知久亜矢子
※アエラムック『大学院・通信制大学2023』より 撮影/加藤夏子(写真映像部) ヘアメイク/知久亜矢子

超難関の宝塚音楽学校に合格したのは17歳のとき。首席で卒業し、娘役トップの座をつかんだ美園さくらさんは、この春、慶應義塾大学の大学院へ進学した。華やかな芸能の世界から大学院へ。好評発売中のアエラムック『大学院・通信制大学2023』では、美園さんに転身に至る背景を聞いた。

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 宝塚歌劇団を退団して1年。大学院に進学した美園さくらさんはいま、「すべてが新鮮で、日々感動しています」と目を輝かせている。

「このまえの授業では、数人のチームで新品のオーブンを最後のネジ1本になるまで解体しました」と話す。念のために言えば、美園さんは機械工学を専攻しているわけではない。

「新しいサービスを構築するうえで、既存のスタイルをいったん崩すことの重要性を学ぶ授業だったんです。電化製品を分解するだけでなく、短い時間で考察して、プレゼンもする。ものすごく刺激的でした」

 同期の学生の7割は留学生。社会人経験のある学生も少なくない。

「英語が話せる・聞けるのは当たり前で、日本語を話さない外国人の先生の授業もあります。プロ並みの動画編集ができる学生も多いんです。私はパソコンも英語も一つひとつ覚えながら進んでいる状態。もう、寝るひまなんて全然ないって感じです!」

 そう言いながらも、美園さんはうれしそうだ。なぜなら「努力すれば何とかなる」と実感しているからだ。

「芸能の世界と比べると、学問の世界は努力が結果に結びつきやすいんです。そこに魅力を感じています」

■努力が必ずしも報われない芸能の世界に生きた10年間

 もともと勉強が好きだった。理系が得意で、「数学検定」で全国1位になったこともある。法曹界にも興味があり、中学生の頃は裁判の傍聴に通い、法廷をスケッチするのが趣味な「変な子」だったと笑う。国立大学の理系学部に進学するつもりだった。それなのになぜ宝塚音楽学校に?

「おばがよく私を宝塚歌劇団の観劇に連れていってくれたんです。華やかな舞台は勉強のリフレッシュには最高で、大好きでした。でも少しずつ気づいたんです。おばさんは私に宝塚を受験してほしいんだなぁって」

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喜びだけの日々ではなかった