千葉・習志野邸の久米さん専用ベッドで。広々としたリビングとダイニングを備える習志野邸では、会員同士のパーティーが開かれることもある
千葉・習志野邸の久米さん専用ベッドで。広々としたリビングとダイニングを備える習志野邸では、会員同士のパーティーが開かれることもある

 何度もADDressのサイト読み直して、じっくり考えて。迷いはあったが、やってみたいという思いは変わらなかった。半年間のプランで入会した。

「とにかく環境をガラッと変えたくて。そのためには大きな変化が必要だろうと思ったのが動機でした」

 久米さんが入会した「ADDress(アドレス)」は、古民家などの空き家や遊休物件をリノベーションし、家具、家電付き、電気代・ガス代・水道代・Wi-Fi利用料をすべて含めて月額4万4000円(税込み)で住み放題というサービスを提供している。1物件あたり月に最大14日まで滞在でき、追加料金を支払えば、好きな家に専用のベッドを確保しておくこともできる。各物件には「家守(やもり)」と呼ばれるコミュニティ・マネージャーがいて、会員同士や地域の人との交流、その土地ならではの体験などをサポートしてくれる。

 久米さんは入会後、東京・二子玉川の家に専用ベッドを持ちつつ、そこから全国の家へと移動する多拠点生活をスタートさせた。フリーランスのライターとして活動を始めたことから、リモートで仕事ができる環境も整い、時間が許す限りいろいろな家に滞在し、地域と交流する生活が始まった。

 いまでこそ、ADDressの物件数は全国に200軒以上あるが、久米さんが入会した3年前は20軒前後で、交通の便の良くない場所も多かった。駅から徒歩30分という物件もざらで、思わず「どうやって行くの?」と天を仰いだこともあったという。

「普通の住宅街とか、すごい田舎とか、ADDressに入っていなかったら絶対に訪れなかっただろう場所ばかり。でも、わざわざ目指してそこに行くというのが、逆におもしろかったですね。“暮らす場所を移動している”という感覚になれるんです。そう、旅というよりも暮らしに行く、という感じです。だから私の場合、予約が取れれば、5~7日はひとつの家に滞在するようにしています。家に着いたらまず近所を歩き、スーパー、銭湯、レストランなどを探します。ここで暮らす、という目線で歩くのが楽しいんです」

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家守という存在が支えになる