惨劇から一夜明け、現場付近につくられた献花台には多くの花束が置かれた(撮影・唐澤俊介)
惨劇から一夜明け、現場付近につくられた献花台には多くの花束が置かれた(撮影・唐澤俊介)

<歴代最高総理大臣 安倍晋三殿 ありがとうございました>

【写真】安倍元首相の後ろで演説を聞いていた山上容疑者

そんなメッセージが書かれた立派な花束が、むなしくたたずんでいた。安倍晋三元首相が演説中、背後から銃で撃たれて殺害されるという衝撃の事件から一夜明けた7月9日。事件現場となった近鉄大和西大寺駅前には献花台が設けられ、大勢の人々が列をなしていた。

 参列した女子高生は、涙ぐみながらこう話した。

「小学校、中学校のときの間、ずっと首相だったから、『首相といえば安倍さん』という感覚。SNSとかでもすごくほほ笑ましい写真が上がっていて、『おじいちゃん』みたいな親しみがありました。いつか会って、『応援してます』と伝えたかった」

 凶行が発生したのは、8日午前11時半ごろ。この日、参院選に立候補した自民党候補の応援演説に訪れていた安倍元首相は、背後から突如、発砲された。

 その場に倒れた安倍元首相はその場で心臓マッサージを受けた後、ヘリコプターで奈良県立医科大学付属病院に搬送され集中治療室に入ったが、午後5時3分、帰らぬ人となった。一報を受けて病院に駆け付けた昭恵夫人が到着した直後のことだった。

 治療にあたった福島英賢教授によると、安倍元首相の死因は、心臓と、胸部の大血管損傷による失血死だった。前頸部(けいぶ)に2カ所銃創があり、その傷の深さは心臓に達し、心室に穴が開いた状態だったという。

「心臓の傷自体は大きなものがあった」(福島教授)

 安倍首相を撃ったのは、奈良市内在住の山上徹也容疑者(41)。事件直後、その場ですぐにSPに取り押さえられた。警察の取り調べに対し取り乱す様子はなく、淡々と受け答えをしているという。

 8日夜に開かれた奈良県警の会見によれば、山上容疑者は、安倍首相が「特定の団体につながりがあると思い込み、犯行に及んだ」といい、安倍氏の政治手法に対する抗議などが動機ではないという。

 犯行には手製の銃が使われたとみられている。8日夜、山上容疑者の自宅であるワンルームマンションのリビングからは、手製の物と思われる銃が数丁、押収された。暴発の危険があるからと爆発物処理車が出動。周辺住民が一時避難するなど、現場は騒然となった。

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唐澤俊介

唐澤俊介

1994年、群馬県生まれ。慶應義塾大学法学部卒。朝日新聞盛岡総局、「週刊朝日」を経て、「AERAdot.」編集部に。二児の父。仕事に育児にとせわしく過ごしています。政治、経済、IT(AIなど)、スポーツ、芸能など、雑多に取材しています。写真は妻が作ってくれたゴリラストラップ。

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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「徹也君も勉強ができた。教育熱心な家庭という印象」