日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「記録的な高温の夏に気になること」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。
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急に猛烈な暑さがやってきましたね。6月25日には、群馬県伊勢崎市で最高気温が40.2度を記録しました。6月に40度を超えたのは、観測史上初めてだそうです。
6月27日には、気象庁より関東甲信地方、東海地方、九州南部で梅雨明けしたとみられることが発表されました。関東甲信地方の今年の梅雨明けは、1951年の観測開始以降、最速だそうです。今年(2022年)は、昨年より8日早い6月6日に関東甲信地方で梅雨入りしたものの、梅雨らしさのない中での、昨年より3週間ほど早い梅雨明けですから、今年の夏は水不足が深刻になりそうです。
さて、記録的な高温に見舞われているのは、日本だけではないようです。北アフリカから到来した熱波の影響を受け、フランスでも6月18日には、南西部のビアリッツでは42.9度、ボルドー近郊のカップフェレでは41.9度といずれも観測史上最高を記録し、パリでは37度だったことが報じられています。
私たちは、春から夏にかけて次第に暑さに体をならしていくことで、暑さに順応しています。夏になると、たくさん汗をかくようになります。外来でも、「今日は暑いですね……」と額に汗を浮かべながら診察室に入ってくる方が、ここ最近急に増えていますが、これは体内の熱を体の外に逃がして体温の上昇を防ぐための大切な調節機能です。また、発汗の他にも、暑さに対する慣れとして現れてくる体の反応として、血液量の増加や心拍数の減少、汗に含まれる塩分濃度の低下などがあります。こうした体の変化を「暑熱順化」と呼んでいます。
しかしながら、今年は、梅雨入り前も梅雨入り後も、肌寒く感じる日が比較的多かったように思います。雨が降り続かない今年の梅雨は、頭痛持ちの私としては大変過ごしやすかったのですが、梅雨明けと急激な気温の上昇では「暑熱順化」できているとは言えず、身体への負担は大きいと言わざるを得ないでしょう。