山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師
山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師

 日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「コロナ禍に渡米して見てきたマスクの着用」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。

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 6月10日から外国人観光客の入国が再開されることが決まりました。当面は、添乗員付きのツアー客に限定し、観光目的の入国者を含む一日当たりの入国者数の上限は2万人とするといいます。約2年2カ月もの間の鎖国状態からの観光客の入国再開は、大きな一歩ではありますが、入国者数の上限の設定やツアー客のみ入国可能という措置では、ハードルがまだまだ高いと言わざるを得ません。

 5月5日に英国の金融街シティーで岸田首相が講演した際、「主要7カ国(G7)諸国並みに円滑な入国が可能となるよう、さらに水際対策を緩和していく。日本は今後とも世界に対してオープンだ。ぜひ日本にお越しください」と述べたことが報じられています。

 例えば、イギリスでは今年の3月中旬よりワクチン接種有無にかかわらず検疫措置は全て撤廃されており、フランスでは昨年2月中旬より、各国をグリーンとオレンジの2つの区分に分け、日本を含むグリーン国からはワクチン接種証明書があれば陰性証明書は不要、ワクチン接種証明書がなければ陰性証明書が必要になる措置がとられています。

 アメリカは、米国行きの便に搭乗する2歳以上のすべての米国への渡航者は、フライトが出発する「1日以内」に受けた新型コロナウイルス検査の陰性証明書と新型コロナウイルスワクチン接種証明書の提示を入国条件としており、カナダは今年の4月以降、ワクチン接種が完了していれば、入国前の陰性証明書の提出を不要としています。

 国内でのワクチン接種が進み、コロナ治療薬は流通に関しては十分ではなく処方制限もあるにせよ、全国の医療機関や薬局に配布されています。満員電車での通勤は特に問題にならず、日本人が国内旅行することは自由であるのにも関わらず、日本人以外(海外からの観光客)の国内への入国には依然として規制し続けるというのは、矛盾していると感じるのは私だけなのでしょうか。

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山本佳奈

山本佳奈

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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日本政府はマスク着用の見解を発表したが