空港で働く人たちはマスクをしていたが、空港を出た人たちはマスクを外していた(写真提供/山本佳奈医師)
空港で働く人たちはマスクをしていたが、空港を出た人たちはマスクを外していた(写真提供/山本佳奈医師)

 その理由のひとつとして、最近の研究でコロナ感染の大部分はエアロゾルを介した空気感染によることが明らかになってきていていることが挙げられるでしょう。コロナ感染は主に屋内で起こり、換気することが感染予防に最も有効です。室内であっても換気を徹底すれば感染リスクが低くなることがわかってきていることから、4月18日の公共交通機関でのマスク着用義務の延長を無効とする判決を受け、米運輸保安局も公共交通機関でのマスク着用を求めないことを発表したのは、科学的であると言えます。

 他に、ワクチンの普及と接種率の上昇、コロナ治療薬の開発、オミクロン株の感染拡大を含めたこれまでのコロナ感染など複数の要因から、マスク着用義務の延長は無効となったのでしょう。

 CDCが公共交通機関の屋内におけるマスクの着用を引き続き「推奨」していることもあるのでしょうか。ロサンゼルス国際空港ではスタッフとして勤務する人を含め、マスクを着用している人を多く見かけましたが、空港から一歩外へ出ると、マスクを着けていない人がほとんどでしたので、空港を出ると自然とマスクを外していました。

 ロサンゼルスやサンディエゴの街中では、多くの人がマスクをせずに日常を過ごしていました。もちろん、マスクを着用している人も見かけない訳ではありません。スーパーマーケットやファストフード、カフェなどのスタッフなど、不特定多数の人と接する仕事をしている人の多くはマスクを着用しており、また美術館や博物館、スーパーマーケットの中など室内では、マスク着用率が少し高かったように感じました。

 CDCは、アメリカの各地の感染リスクをコロナの流行状況に応じて高(High)・中(Medium)・低(Low)の三段階に分けています。そして、そのリスクに応じたマスクの着用を推奨しています。具体的には、リスクが低い地域では「あなたの個人的な好みに基づいてマスクを着用してください」と書かれています。リスクが中等度の地域では、免疫が低下している場合か重症化のリスクが高い場合、あるいは重症化のリスクの高い人と接する機会が高い人にマスクの装着を推奨しています。そして、リスクが高度の地域では、「予防接種の状況や個人のリスクに関係なく、公共の場での屋内で適切なマスクを着用してください」となっているのです。

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マスクの着用は個人で考えて選択する流れに