放送作家の鈴木おさむさん
放送作家の鈴木おさむさん

 放送作家・鈴木おさむさんが、今を生きる同世代の方々におくる連載『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は、エンタメにとって大事なものは何かについて。

【写真】横浜・ランドマークプラザに展示されている「シン・ウルトラマン」のバルーン

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 映画「シン・ウルトラマン」をようやく見てきました。小学一年の息子を連れて。息子はアベンジャーズシリーズをほぼ見ています。映画館にもよく連れて行くのですが、今回は、ウルトラマンの存在をあまり知らなかったので、息子が「行ってもいいよ」と上から目線でOK。

 大ヒットしているこの映画。やはりウルトラマンという、日本の中でも有数の認知度の高いキャラクターの映画。しかも「シン」シリーズ。

 2016年に公開された「シン・ゴジラ」。「もしも日本に本当にゴジラが出たら国はどう対応するのか?」ということがこの映画の背骨なのではないかと勝手に思っているのですが。

 ゴジラという、日本人なら誰もが知るファンタジーの中での生き物。映画の中でしか存在しないはずのゴジラを、まるで天災のようにとらえて表現していく。「確かに、ゴジラが出たら、国はこういう対応するかも」とかなりのリアリティーを感じさせてくれたことにより、僕はかなり興奮した。

 絶対の嘘と現実を結び付け、嘘じゃないかもしれないと思わせてくれることはこんなにもエンタメになるのだと感動した。

 そして今回のシン・ウルトラマンは、僕の中では「もしもウルトラマンが出たら日本はどうなるのか?」と思って見に行ったのですが、そうではない気がして。ウルトラマンってゴジラと違って誰もが登場を望んでいる存在ですよね。だからこのシン・ウルトラマンは、「どうやったらウルトラマンが実際にこの世に存在できるのか?」なのではないかなと勝手に思っている。

 どういう状況があれば日本に怪獣が現れて、そしてそれを倒すウルトラマンがやってきてくれるのか?

 シン・ゴジラの時は、ゴジラが実際に登場することにより、国の対応策を描いていたが、シン・ウルトラマンの場合は、ウルトラマンが存在できる理由と理屈を結構描いていたと思う。

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鈴木おさむ

鈴木おさむ

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

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嘘×リアリティー。この掛け算が大事