憧れのフルリモートの実態は……(写真はイメージ/GettyImages)
憧れのフルリモートの実態は……(写真はイメージ/GettyImages)

 これからの「働く」をAERAdot.と一緒に考える短期集中連載「30代、40代の#転職活動」。第2回目のテーマは、テレワークのリアル。その前編では、妻の2人目出産を機に「フルリモート可」の求人に飛びつき東京からUターン移住した38歳の男性Aさんの実例を紹介。コロナ禍で多様な働き方の選択肢は広がったが、一方でフルリモートの実態が浮かび上がってきた。

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 コロナ禍でテレワークが浸透し、出社せずとも仕事できるテレワークへの需要が高まっている。マイナビが行った「転職動向調査2022年版」によれば、「転職希望先に応募する際、在宅ワーク・テレワーク制度は応募にどのように影響するか」との問いに対して、「プラスに働く」と答えた人は、全体の72.9%。

 さらにリクルートの調査(「新型コロナ禍を受けたテレワーク×住まいの意識実態調査」2020年)によれば、「今後もテレワークを実施したい」と答えた人は84%に上る。働きながら休暇を取る「ワーケーション」や、複数の場所を拠点として生活する「多拠点生活」といった言葉も聞かれるようになり、リモートワークによって、働く場所の自由度が飛躍的に高まっている。前編の実例Aさんのように、移住したからといって、必ずしも移住先となる場所で働き口を見つけなくてはいけない時代ではない。

 ただ、住む場所を大きく変えられるほどのテレワーク制度を導入している企業は、まだまだ少ない。日本では、ヤフー株式会社や株式会社メルカリが、全国どこに住んでも社員として認める制度を取り入れ、“転職なき移住”ができることが話題になったが、こうした体制を整えられるのは一部の企業に限られているのが現状だ。

 テレワークのデメリットを上げる声も聞かれる。リクルートがテレワーク経験者を対象に行った調査(2020年)によれば、テレワークによって「仕事の全体感の把握」、「仕事の進め方の裁量」、「上司や同僚からのフィードバック」の項目が大幅に低下。働く個人のモチベーションに関わる「仕事の意義の喪失」、「職場での気兼ねない対話の減少」といった傾向も見られた。回答者からは、「顔も知らない相手を仕事することに抵抗を感じる」、「相手の仕事の進捗状況が分かりづらい」、「耳から入る情報が少なくなった」、「コミュニケーションが取りづらい」といった声も寄せられている。

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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企業側もテレワークに課題を感じている