新型コロナウイルスに感染した人が後遺症に悩むケースも増えてきています。そんな後遺症についてまとめた研究結果も出ており、疲労、頭痛、注意力障害、脱毛、呼吸困難が多いようです。近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司医師が解説します。

【データ】コロナ後遺症、出やすい年代・性別は

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 COVID-19(新型コロナウイルス感染症)は回復後、数週間から数カ月続く後遺症、もしくは医学的合併症が知られていました。いわゆるLong COVIDと呼ばれるものです。発症後2週間以上持続し、健康だったころのベースラインに戻らない症状、徴候、異常な検査値は、COVID-19の長期的影響と考えることができます。Long COVIDは、主に重症だった患者さんで報告されていますが、入院を必要としない軽症の患者さんでも起きることがわかっています。

 今回、COVID-19の長期的な影響を評価する研究が発表されました。1万8251件の論文から4万7910人の患者を解析した結果では、COVID-19患者の80%に最低一つは長期に持続する後遺症があったようです。最も一般的な五つの症状は、疲労(58%)、頭痛(44%)、注意力障害(27%)、脱毛(25%)、および呼吸困難(24%)でした。

※写真はイメージです(写真/Getty Images)
※写真はイメージです(写真/Getty Images)

 少し細かく見てみましょう。Long COVIDで最も多かった疲労は、初発症状から100日後でも持続していたようです。さらに、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)と呼ばれるような重症例では、1年後に患者さんの3分の2以上が疲労症状を訴えているとの報告もあります。

 頭痛、注意力障害のほかに、嗅覚障害(21%)も報告されています。COVID-19感染後に、不安障害、不眠症、認知症の報告もありました。初診の段階から60~100日経過しても、35%の患者さんで肺の異常をCTスキャンで確認されたようです。

 私が専門とする皮膚科領域では、脱毛が問題となっています。脱毛の出現時期は、コロナ症状出現後の58.6日が平均で、回復まで平均76.4日かかったようですが、観察期間の最後まで治らなかった患者さんも含まれていました。Long COVIDによる脱毛の治療は、まだ確立されていません。私たちが皮膚科外来でみる脱毛症と同じように、カルプロニウム塩化物水和物を含有した育毛剤を処方し経過をみます。脱毛部位が少なく、隠せるようであれば問題ないですが、範囲が広い場合はウィッグの着用も検討します。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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