「ザ・ベッド&スパ所沢」のサウナ室(画像=施設提供)
「ザ・ベッド&スパ所沢」のサウナ室(画像=施設提供)

 だが実は、ひんしゅくを買うことなく堂々と水風呂に潜っていいサウナが近年増えつつあり、ひそかな人気となっている。

 前出の「ザ・ベッド&スパ所沢」で、「頭から汗をしっかり流した上で」水風呂に潜って良しとしたのは5年ほど前のこと。

 施設の担当者は、「良いともダメとも決めておらずあいまいなままだったのですが、ちゃんと頭から汗を流すことを条件に潜っていいとするルールを作り、水風呂のそばにそのポスターを掲示しました。すると、お客さまたちがSNSなどで潜れることを話題にしてくださって、好評を得ていることを実感しました。集客にも効果があったように思います」と話す。

 潜水についてのクレームはこれまで一件もないという。

 この施設を含む数多くの温浴施設をプロデュースし、愛好家たちから「サウナ王」の愛称で知られる楽楽ホールディングス代表取締役の太田広氏は、

「かなり昔から、サウナ愛好家の男性たちからは、水風呂に頭まで潜りたいという声がたくさん出ていたんです。サウナ好きの私から見ても、その方が間違いなく気持ちがいいです」と語る。

 ただ、温浴施設の浴槽は循環式が多く、頭まで潜った場合、「ヘアキャッチャー」と呼ばれる髪やタオルくずなどのゴミを取り除く装置の清掃を通常よりも多く行うことになる可能性があり、その場合、経営側としては作業が増えるデメリットもあるという。「その負担を避けるために潜水禁止としている施設もあると思います」(太田氏)

 サウナも水風呂も、体調と相談しながら楽しむことが肝要なのは言うまでもないが、こうした潜れる水風呂は今後トレンドになっていくのか。

「愛好家の間で人気になったお店にならって、特に男性専用のサウナ施設などで潜水OKとする施設が増える可能性はあると思います。その一方、潜る行為を嫌がる人が多いのも事実で、導入がマイナスに働いてしまう可能性もあります。個人客が多いか家族連れが多いか、年齢層はどうかなど、施設ごとにニーズを見極めて判断していく必要があるでしょう」(太田氏)

 潜水OKの「聖地」で誰にも遠慮なく快感を満喫できれば、またひと味違う“ととのう”を体感できるかもしれない。(AERAdot.編集部・國府田英之)

著者プロフィールを見る
國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

國府田英之の記事一覧はこちら