今回の試合を秋山は「喧嘩」とも言い表し、さぞ胸中には怒りが湧いているかと思いきや、そうではないという。

「いや、怒りなんてないですよ。ちょっとふざけてるな、ウソっぽく聞こえて仕方がないというか。『茶番かな、こいつ』みたいには思いましたけど、それは怒りじゃないと思うんです。何だろう……中学の怖い先輩が後輩に『お前フザけんなよ、ちゃんとしろよ』みたいな、そんなノリで。だから、先輩が後輩をしつける姿を見てほしいです」

 ONEのチャトリCEOも認める真の不仲である秋山と青木。DREAM以来、長く忌み嫌ってきた2人をケージで向き合わせるのは、まさに青木言うところの「文脈や物語のある格闘技」だが、秋山自身は「“どう伝えたい”とか正直あまりなくて」とそういったことを意に介さず、勝つだけに集中してここまで来た。

 相対する2人が真逆であればあるほど、試合の熱量は高まる。「ONE X」20試合の中で青木が全く異質なものを見せるか、秋山が物語を許さず斬り捨てるのか。(文/長谷川亮)

●プロフィール
長谷川亮/1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」 編集部を経て2005年よりフリーのライターに。 格闘技を中心に取材を続けている。 そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『 琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』( 2019)の監督、格闘技・プロレスのインタビューチャンネル『 青コーナー』の運営も。