同じく、レアル・マドリードで満足な出場機会を得られない立場でありながらも、不世出の才能を持ったファンタジスタが、スペイン人MFのイスコである。マラガ時代に名を上げ、2013年6月に21歳でレアルに加入。傑出したボールテクニックを持ち、足にボールが吸い付くようなドリブルで相手のタックルを次々とかわし、タメを作りながら鋭いパスでチャンスを創造。スペインの世代別代表にも選ばれ続け、2018年W杯ではラ・ロハの攻撃の中核を担った。だが、ハメス同様、スピード不足と戦術不適合よって出番を減らしてキャリアは尻すぼみ。現在29歳で、全盛期の多くの時間をベンチで過ごしてしまった。それでもファンを沸かせる天才的なプレーは健在で、移籍市場が開くたびに他クラブからのオファー、関心ぶりが取り沙汰されている。

 ハメスとイスコ、彼らに足りなかったスピードを兼備する新たなファンタジスタが、ポルトガルの至宝、ジョアン・フェリックスだ。15歳でベンフィカに入団し、トップ昇格を果たした2018-19シーズンにいきなりーグ戦26試合15得点9アシストの大活躍を披露し、2019年7月に移籍金1億2600万ユーロ(当時約153億円)でスペインのアトレティコ・マドリードへ加入した。優れたボールコントロール能力とエレガントな身のこなしで“違い”を見せ、カカを彷彿とされるドリブル突破とルイ・コスタを連想させるキラーパスで決定機を演出し、自らもゴール前に飛び出して得点を奪う。規律の多いディエゴ・シメオネ監督のチームでは故障もあって適応に苦しんでいるが、その中でも非凡なセンスを随所で発揮。何よりまだ22歳。今後の成長と真のブレイクが期待される。

 長らくサッカー界は、メッシとクリスティアーノ・ロナウドの2人がバロンドールを独占(2008~17年)する「メッシ・ロナウド時代」が続いたが、「スピード」と「決定力」が自慢の2人をファンタジスタと呼ぶかどうかについては異論がある。同様にネイマールも極上のテクニックを持っているが、ファンタジスタというよりはドリブラーだ。

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日本人でファンタジスタの素養があるのは?