マッチングアプリを使って「性的被害」にあう女性は少なくない(写真はイメージです。記事とは関係ありません)
マッチングアプリを使って「性的被害」にあう女性は少なくない(写真はイメージです。記事とは関係ありません)

 婚活などでマッチングアプリを利用して真面目な男性と出会えたと信じていたのに、実は身体の関係目的だったと知り「性的被害を受けた」と相談に行く事例が後を絶たない。AERAdot.では、そうした女性たちからの相談を受ける弁護士の話をもとに、2月12日、「ホテルで望まない行為 マッチングアプリ交際で性的被害が続出 警察扱わず、泣き寝入りも」という記事を配信した。その記事への反応として多かったのが「アプリを利用している時点で(身体目当ては)わかっていたはず」「(関係を)拒否しなかったのだから後から性的被害というのはおかしい」などの意見だった。なぜ男性の本心に気づいたり、拒否したりすることができなかったのか。30代女性の事例を基に、精神科医に女性の心理状況を分析してもらった。

【性的被害者が引き起こす心身の不調】

*  *  *
「まじめそうでいい人。好印象でした」

 30代のAさんはマッチングアプリでつながった男性と実際に会い、お酒を飲みに行くことになった。食事では男性との会話もはずみ、楽しい時間だったという。

 その後、2人は一緒に店を出て歩いていると、男性はこう言葉をかけてきた。

「酔ってるよね。ベンチで休もうよ」

 ベンチに並んで座ると、ここで初めて男性との距離が近づいた。そして少し時間がたつと、

「じゃあ、行こうか」

 優しい口調でそう話した男性。視線の先にはホテルがあった。

 Aさんはこの瞬間まで、近くにホテルがあることも、男性が「その気」であることもまったく気が付かなったが、拒絶はできなかったという。

「いつの間にかというか……断り切れなかったというか……。そのままホテルに行って関係を持ってしまったんです」(女性)

 そのまま「交際」を続けること数カ月。とあるきっかけで、男性には他に恋人がいることが分かった。女性が問い詰めると、男性は遊びの関係だったとあっさり認めたという。

「実はホテルでは、私が望まない過激な行為を何度もされました。でも恋愛感情がありましたし、本気の交際だったと信じていたのでがまんしてきました。断って嫌われたくなかったし、ずっと交際を続けたかった。それが、ただの性欲のはけ口だったなんて……。法律で罰を与えたい、絶対に許せないです」

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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「自分だけは大丈夫」と思いこむ心理