写真はイメージです(Getty
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写真はイメージです(Getty  Images)

 夫婦間のモラハラがいま、大きな問題になっている。離婚の大きな理由になるが、それに気づかない被害者も多い。なぜ望んで一緒になった相手を傷つけてしまうのか。結婚後に豹変する夫にはどんな特徴があるのか、また被害にあいやすい人はいるのだろうか。夫から妻へのモラハラの事例を紹介しつつ、専門家の分析をまとめた。

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>>【4歳年上銀行員の夫のモラハラ「君はダメな人間だ」 Yシャツのボタンの縫い方で朝まで説教】より続く

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<Aさん女性35歳の場合>元夫は4歳年上の銀行員。同居後しばらくして、元夫は言動が攻撃的に。些細な事で「君はダメな人間だ」と責められるようになった。長時間説教が常態化し、不機嫌な態度で1か月に渡って無視されることもあった。Aさんは「夫は私のためを思って言ってくれている」と解釈し、自分が悪いと思い込みはじめた。“洗脳”が解けるきっかけは1年ぶりに会った母親。そこでようやく被害に気づき、離婚に至る。ただ、最後まで元夫は自分の非は認めなかった。

 夫から妻へのモラハラでよく見られる言動には、「何でも相手が悪いと怒る」「人格を否定する」「自分のルールが絶対」「長時間に渡り説教する」といった項目に加え、「実家や友人との交流を禁止する」「外で仕事することを禁止する」という傾向も見られる。Aさんの場合も、母親とは1年会っていなかった。元夫が嫌がったためだ。

 外とのつながりが薄れ、妻が家庭内に閉じこもっていくにつれ、モラハラ環境の密室化がますます強まってしまう。そうした妻の精神的ダメージは深刻化するケースが多いという。

 さらに厄介な言動が、「ひどく罵った後で、優しくする」という特徴だ。夫からの「君はいつも辛いことから逃げようとするから、僕が鍛えてあげている」「君のためを思って言っている」という発言を“優しさ”と信じて受け取ってしまい、被害者である妻は「前は優しかったし、厳しいのは私のため。私がちゃんとした人間になれば、あの人も優しく戻ってくれるはず」となる。実際は、「君のためを思っている」「君を尊重している」といった仮面をかぶり、「君が選んだ」「君は納得したはず」と、モラハラというコントロールで導き出した被害者の選択や態度を強いているのだが、モラハラを受けている最中はそれに気づけないのだ。

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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夫は私のためを思って言ってくれている