スポーツ紙記者は実況の「絶叫スタイル」についてこう話す。

「どのやり方が正解とかはないと思います。ただ、箱根駅伝が好きな視聴者の中には、もっと監督車両からの声を聞きたいという要望も少なくない。マイクをもっとクリアにすれば、テレビ越しにもはっきり耳に伝わると思うし、副音声などで現場の音だけを拾って少し遅れてもいいから字幕にして中継するのもアリだと思います。例えば青学大の原監督は選手を褒める声掛けが多いのに対し、駒沢大の大八木弘明監督はおとこ気に訴えかけるメッセージが多い。声掛けは監督によって十人十色で面白い。個人的には初出場の駿河台大の徳本一善監督が印象的でした。現役時代はサングラスに髪を明るい色に染めた異端児のイメージがあったのですが、選手への声掛けは心に響くものばかりで熱かったです」

 初出場の駿河台は19位だったが、繰り上げスタートになることなく最後までたすきをつないだ。徳本監督、ランナーたちの熱気は視聴者にも伝わってきた。「箱根駅伝で走りたい」と中学教師を休職した31歳の今井隆生が4区で走ったが18位から最下位の20位に転落。苦悶の表情を浮かべて走る今井に対し、徳本監督が「おまえに残された時間は(残り1キロで)あと3分だ!楽しかったことを思い出せ!おれは楽しかったぞ」と熱いゲキ。今井は走り終えると大粒の涙を流していた。

 レース中の声掛けには監督と選手が紡いだドラマがある。もっとフォーカスされても良いかもしれない。(桜井海)