安倍晋三元首相と岸田文雄首相
安倍晋三元首相と岸田文雄首相

 安倍、菅政権の“懐刀”が大阪の政界へ進出し、波紋を広げている。

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 大阪府と大阪市は第2次安倍政権と菅政権で首相補佐官を務めた和泉洋人・元首相補佐官を特別顧問に委嘱すると24日、発表した。

 国土交通省の官僚だった和泉氏は、安倍晋三元首相、菅義偉前首相の下で、政権運営を支えた“懐刀”だ。

 岸田政権となり退任し、現在は一般財団法人日本建築センター顧問に就任している。旧建設省出身の和泉氏は補佐官時代、国土強靱化や新型コロナウイルス対策などが担当だった。

 大阪は2025年に「大阪・関西万博」が開催され、その後はIR(統合型リゾート)でカジノ誘致を目指している。また、JR大阪駅北側の「ウメキタ再開発」も進んでいる。

 日本維新の会代表で松井一郎・大阪市長は万博やIRの開発を念頭に起用の理由をこう語った。

「和泉氏には国での経験から幅広い豊富な人脈がある。国との調整などにアドバイスをしていただきたい」

 10月末の衆院選が終わって間もない時期に、松井氏は東京に出向き、菅前首相と食事を共にしたという。自民党幹部がこう語る。

「松井氏がわざわざ選挙後というタイミングで、菅氏を訪ねた。大阪は安倍政権、菅政権時代は官邸に直接のパイプがあったが、岸田政権になり、その関係が途切れたので、官僚に睨みがきく菅氏に後ろ盾になってほしいとの考えでしょう。その中で、和泉氏の特別顧問就任の話が出たそうです」

 杉田和博官房副長官(当時)とともに、官邸を安倍、菅政権時代、牛耳ってきた和泉氏。とりわけ、安倍政権で長く官房長官を務めた菅氏は和泉氏の手腕を高く評価した。

「縦割りの弊害を打ち破って、役所をうまく使える」

「官邸の意向を役所にしっかりと反映させて、実現までこぎつけられる」

 だが、あまりに官邸の力が強くなり、「政高党低」と、自民党総裁選でも、問題視された。日本維新の会に所属する国会議員は和泉氏の起用についてこう話す。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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岸田政権にケンカを吹っ掛けた大阪