記念撮影する田中英寿容疑者(前列左)、理事の井ノ口忠男被告(後列右)、医療法人「錦秀会」前理事長の籔本雅巳被告(後列左)(日大HPから)
記念撮影する田中英寿容疑者(前列左)、理事の井ノ口忠男被告(後列右)、医療法人「錦秀会」前理事長の籔本雅巳被告(後列左)(日大HPから)

 国内最大のマンモス大学への東京地検特捜部の強制捜査から2か月半、とうとう日大の“本丸”に捜査のメスが入った。

【写真】通称「許永中」神社の石碑には田中理事長夫妻の名前が…

 日本大学をめぐる背任事件に関連し、東京地検特捜部は11月29日、理事長の田中英壽容疑者を脱税の疑いで逮捕した。逮捕前、田中容疑者は学内の会議で「俺は逮捕されない」と豪語していたという。

 田中容疑者は背任の罪ですでに起訴されている医療法人前理事長の籔本雅巳被告らから受け取ったリベートなどを税務申告せず、2018年と去年の2年間で、所得税計5300万円を脱税した疑いがもたれている。

「ついに来る日が来たかという感じですね」

 日大のある教授は複雑な心境を語る。

 東京地検特捜部は9月、板橋病院を巡る背任事件で日大本部(千代田区)や杉並区の田中容疑者の飲食店兼自宅などを家宅捜索。特捜部は田中容疑者の側近、元日大理事、井ノ口忠男被告と籔本被告を逮捕、起訴していた。家宅捜査では、田中容疑者の自宅から約2億円の現金が発見されていた。また、背任事件の捜査の過程で、2人から7000万円から8000万円の現金が田中容疑者に渡っている疑惑も浮上していた。

 田中容疑者はこれまで数々の「カネと黒い交際」がささやかれていた。

 指定暴力団・六代目山口組の司忍組長と田中容疑者のツーショット写真が週刊誌で報じられるなど、スキャンダルが多かった。それでも日大を牛耳り、相撲を通してJOC(日本オリンピック委員会)の副理事長、国際相撲連盟会長まで務めた。

 東京五輪・パラリンピックの招致が決まった後、JOC幹部が「田中容疑者が副理事長でいれば、ヤクザオリンピックかと言われかねない」と頭を抱えていた。それほど田中容疑者のスキャンダルは問題視されていた。

 田中容疑者が親しくしていたのが、戦後最大の経済疑獄、イトマン事件で逮捕された「闇のフィクサー」と呼ばれた、許永中氏だった。

 許氏は経済人、政治家と裏の社会の人脈を巧みに利用し、一大グループを築いた。大の相撲好きだったという許氏は、大阪市北区に通称、許永中神社といわれる「西向不動尊」を建立した。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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許永中神社の石碑に田中理事長夫妻の名前