通称、許永中神社といわれる「西向不動尊」の石碑には田中理事長夫妻の名前(撮影・今西憲之)
通称、許永中神社といわれる「西向不動尊」の石碑には田中理事長夫妻の名前(撮影・今西憲之)

 その際にも、田中容疑者と妻の名前が石柱に刻まれるなど深い関係だった。

 田中容疑者は当時、日本相撲協会の武蔵川理事長(元横綱三重ノ海)を許氏に紹介。大阪に国技館を建設する計画までぶち上げたという。

 これまで「カネと黒い交際」のスキャンダルが報じられようが、逃げ切ってきた田中容疑者だが、2005年に学内で一度だけ問題化したことがあった。AERAdot.編集部が入手した2005年8月にまとめられた日大第三者委員会の「中間報告書」には興味深い記述がある。

2005年に日大第三者委員会井の中間報告書
2005年に日大第三者委員会井の中間報告書

 田中容疑者が業者からリベートを受け取っていた可能性が高いと結論づけた報告書は、「黒い交際」にも言及していた。

<暴力団関係者との交際>という項目では、逃亡中の許氏と田中氏が密会したことが記されていた。

<田中氏は保釈中に逃亡した許がコートの襟を立てて田中方を訪れ、食事をして行ったと周囲に話していたことが認められる。ちなみにイトマン事件で保釈中の許が旅行先の韓国で失踪したのは、平成9年(1997年)10月のことであり、都内のホテルに潜伏中に身柄を拘束されたのは同11年(99年)11月のことであって、(許氏が)田中方を訪れたのはこの間の出来事>

 そして、田中氏が「土俵は円 人生は縁」(早稲田出版)という著書を出版したパーティに関する興味深い記述もある。

<パーティには建設業者等約1300名の出席者の中に暴力団風の風体の人物は2−30名きていたことが認められる>

<最近でも暴力団風の人物と交際が絶たれていないことが窺える>

 暴力団との関係が指摘されていた。

「背任事件では井ノ口被告が田中容疑者の指示、金について口を割らなかったから立件が見送られた。だが、カネの出入りについては明確だった。今後、脱税額がさらに増える可能性もある」(捜査関係者)

 松野博一官房長官は記者会見で、田中容疑者の逮捕に触れ、「極めて遺憾。事実関係を確認して、厳正な対応」と述べた。

「井ノ口、籔本被告が起訴された時も学内の集まりで『どれほど調べても俺はシロ』『調べた検事にもシロなんだから話を聞いても仕方ないと言ってやった』などと豪語。田中容疑者はずっと強気の姿勢を崩さなかった。田中容疑者は相撲界、スポーツ界だけではなく、政界や経済界との繋がりも深い。今後、どこまで捜査が伸びるのでしょうか…」(日大関係者)

(AERAdot.編集部 今西憲之)

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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