写真はイメージです(Getty Images)
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 首都圏の新築マンションの価格は上昇し、中古のいい物件はめったに売りに出ない、出てもあっと間に買い手がつくーー。東京で家を買うのは、なんとも大変な時代になったが、共働き夫婦の購入意欲は高いという。最近の不動産事情を探った連載「それでも夫婦は東京に家を買う」。子育て世代は何を重視して、23区のどこにマイホームを購入しているのか。リアルなケースを取材した。まずは「ブランド志向」の是非について。

【一目でわかる】首都圏中古マンション1番お得な地域は? 新築との価格差で比較

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「家を買うならやっぱり港区。それも、高級住宅街じゃないとね」

 都心のIT企業に勤めるAさん(40)は、周囲に得意げに力説する。現在、2歳年上の共働きの妻と、二人の子ども(5歳、3歳)とともに、3年前に建てた新築戸建で暮らしているのだ。

 夫婦ともにブランド志向が強く、「子ども服は、この海外ブランドじゃないと」「宿泊するなら一流ホテルじゃないと」「iPhoneは常に最新機種を持っていないと」といった具合に、夫婦間での“暗黙のブランドルール”は数知れず。とにかく見栄っぱりなのだ。

 そんなAさん夫妻が都内で家を買うとなったとき、真っ先に考えたのが、「どのエリアに住むか」。夫婦で導き出された答えは、いわゆるブランドエリアの筆頭格として名高い、港区の高級住宅街だった。

  Aさん夫妻にとって決め手になったのは、ブランド志向を満足させるエリアだったことだけではない。購入の大きな後押しになったのが、子どもの育つ環境という視点だ。「教育水準の高い学校に通わせたい」という点だけでなく、成長とともに自然とつながる子どもの交友関係がお金に代えがたい価値に思えたからだ。子どもがのちのち人生に役立つ人脈を築くことができるならば「一定以上の収入の裕福な世帯がいるエリアを選ぶべき」だと考えたという。

 しかし、問題は資金計画。夫婦共働きで収入は安定しているが、港区は都内でも有数の地価を誇るエリアだ。のちのち教育にも力を入れたい方針を鑑みれば、教育費も人並み以上にかかってくるかもしれない。こうした条件を踏まえ「これなら何とか払っていけるだろう」と予算から割り出したのが、敷地面積が約13坪という小さな土地だった。面積は小さいが、3階立ての家を建てたら延床面積を60平米前後に広げられる。こうして都心に多い3階建ての“狭小住宅”を建てることで、念願の港区に城を持った。

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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