フェイスシールドをする赤ちゃん(gettyimages)
フェイスシールドをする赤ちゃん(gettyimages)

 子どもを中心に夏に感染が拡大する手足口病が、流行の兆しを示している。また、夏から秋に子どもたちの間で感染が拡大していたRSウイルスが、今年は春から夏に大流行した。子どもがかかりやすい病気の感染時期に、ずれが生じているのだ。専門家の間では、コロナ禍での徹底した感染予防によって子どもたちが抱えた「免疫負債」によるずれを懸念する声があがっている。

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「新型コロナウイルスの副産物として、RSウイルスが今年爆発的に拡大したと見ています」

 こう話すのは、厚生労働省・新型コロナウイルス感染症クラスター対策班のメンバーで、新潟大大学院医歯学総合研究科の菖蒲川由郷特任教授(公衆衛生学)だ。

 RSウイルスは、2歳までにほとんどの子どもがかかる病気だ。主な症状は、鼻水や咳などの症状だが、重症化すると気管支炎・肺炎などのリスクが生じる。ここ数年は夏から秋に流行があった。

 しかし、昨年は感染の報告数が激減していた。国立感染症研究所によると、2018年と19年は9月中旬頃にピークを迎え、一つの医療機関あたりの報告数はそれぞれ2.46件、3.45件だったが、昨年は同じ時期で0.05件と大幅に減少していた。報告件数の総数で見ても、18年に12万件、19年に14万件だったのが、20年はわずか1万8千件となっている。

 だが、今年は春先から感染の報告数が増え始め、7月上旬にはピークを迎え、一つの医療機関あたりの報告数は5.99件と例年を大きく上回った。総数も11月14日時点までの数字で、22万件にもなっている。

 実は同じような季節外れの感染拡大が他の国でも見られている。国立感染症研究所によると、アメリカやフランス、イギリスなどでは20年は18年、19年と同様の流行が見られなかった一方で、今年に入ってからRSウイルスの感染者数が大きく増加しているという。

 菖蒲川特任教授はこう見る。

「コロナ禍において皆がマスクや手洗いなどの衛生行動をとったがために、RSウイルス感染症に感染する機会がなく、感染者も激減しました。良いことにも見えますが、免疫を持たない子どもを増やすことにもなりました。それが免疫の“負債”となり、つけがまわって今年は大流行したと理解しています」

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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手足口病、ヘルパンギーナも季節外れの流行懸念