タレント業の隙間をぬって、松本はキャンピングカーの事務所で電話番や車の点検、清掃を行っている(本人提供)
タレント業の隙間をぬって、松本はキャンピングカーの事務所で電話番や車の点検、清掃を行っている(本人提供)

 その後、さまざまな人のツテもあり、2021年3月、福岡県に本店を構える「バンライフレンタカー」のフランチャイズ店として、松本がオーナーを務める「オフィスアムズ(バンライフレンタカー東京杉並店)」がオープンした。

 場所は杉並区方南。従業員は松本を含め2人のみ。松本もタレント業の隙間をぬって、電話番や車の点検、清掃を行っている。

「オープンさせてから休みはほとんどない。でも休みって、私にあまり必要ないんです。私は常に動いているほうがいい。何かしていないと不安で不安でたまらない。貧乏性なんです」

 誰もが気軽に利用しやすいように、料金をできるだけ安くすることも心がけた。他社がレギュラーシーズンで平日8千円~1万円程度(24時間)などに対し、「オフィスアムズ」のバグトラは平日5千円(24時間)だ。

「利益ですか?正直、ほとんどないです(笑)。でも別にいいんです。元々、利益を考えてはじめたわけじゃないので」

 ただ、オープンした当初は、緊急事態宣言の真っ只中だったこともあり、お客さんはほとんどいなかった。コロナの収束も見えない中、このまま本当にやっていけるのか不安になったこともあった。感染者が減るにつれ、徐々にお客さんは増えてきたが、まだまだ軌道にのっているとはいえないかもしれない。ただ、「不安は一切ない」と松本は話す。

「旅から戻ってきたお客さんが『すごく楽しかったです』と笑顔で言ってくれる、もうそれだけ私は十分なんです。中には『最近、会社でつらいことがあったけど、これで明日から頑張れます』って言ってくれたお客さんもいます。そんな言葉をきいたら、不安なんて一瞬で吹き飛びます。私のほうが逆に元気をもらえていますよ。思い返せば、電波少年をやっていた時も、アポ無しロケで危険な場面はたくさんあって、大変な思いもしましたけど、『誰かが喜んでくれた』という事実さえあれば、もう全てが報われていました。今回のレンタカー業もその時と同じ感覚なんです」

 そんな松本は、2022年1月23日に待望のコンサートが控える。出演は、松本を含め、布川敏和、森尾由美、浅香唯、西村知美という豪華なメンツだ。今年1月に開催する予定だったが、コロナの影響もあり、延期を余儀なくされていたという。

「開催できるチャンスをいただけたことはほんとうにありがたいことです。10、20代の若い世代から私の同年代まで、幅広い世代の人たちに楽しんでいただけるようなヒット曲をたくさん歌う予定です。楽しみにしていてほしい」

 誰かの喜ぶ姿がみたい――。そんな松本の思いに、エンターテイメントの原点を見た気がした。(文/AERA dot.編集部・岡本直也)

■まつもと・あきこ/1966年4月8日生まれ、香川県高松市出身。1982年に日本テレビ系オーディション番組『スター誕生!』チャンピオン大会で合格し、翌年に歌手デビュー。その後、元祖バラドルとして人気バラエティー番組『DAISUKI!』『進め!電波少年』(日本テレビ系)などに出演し、明るく親しみやすいキャラクターで人気を確立する。現在は、バラエティ番組のほか、女優としても活動中。2022年1月23日には「松本明子presents 『黄金の80 年代アイドルうたつなぎ~うれしなつかし胸キュンコンサート~』」を開催予定