京王線刺傷事件 「非常用ドアコック」だけじゃない、見直すべき安全対策とは

2021/11/03 15:06

国領駅で緊急停車した電車の窓から、乗客が次々と脱出していった=2021年10月31日、東京都調布市(乗客提供)
国領駅で緊急停車した電車の窓から、乗客が次々と脱出していった=2021年10月31日、東京都調布市(乗客提供)

 10月31日、京王電鉄京王線の特急新宿行き車内で、刺傷及び放火事件が発生した。電車内で男女17人が刺されるなどして重軽傷を負い、殺人未遂容疑で服部恭太容疑者(24)が警視庁に逮捕された。事件後、ツイッターに投稿された動画には、乗客がパニックに陥って別の車両に逃げたり、窓からホームへと逃げ出したりする様子が映し出されていた。

■乗客の非常用ドアコック操作が混乱を助長させる

 報道によると、事件は調布発車後に起こり、隣の布田通過時に非常通報ボタンが押されたという。実はこのボタンを押しただけで、電車は急停車しない。鉄道車両の多くはボタンを押した後、乗務員と直接通話ができる。状況を把握して、適切な対応をするためだ。ただ、今回の場合は車内が騒々しく、車掌は乗客の声が聞き取れなかったらしい。

 布田通過後、電車は隣の国領で緊急停車することになった。ところが、乗客が非常用ドアコックを操作したことで、非常ブレーキがかかり、停止位置の約2メートル手前で、国領に緊急停車した。電車の乗降用ドアとホームドアの位置が合わないほか、非常事態も重なり、停止位置の修正も困難な状況になったため、乗客は側窓から降り、ホーム上で避難することになった。側窓は3分の1程度で全開のため、脱出も容易ではないが、幸い転落事故は発生しなかった。

■車両とホームドアの構造が幸い

 今回の事件は、状況が違えばより多くの被害が出た可能性もある。

 まず、事件の当該車両となった8000系が、10両貫通編成化の改造車であることは不幸中の幸いだった。新製当初は4両(1~4号車)+6両(5~10号車)の分割編成で、4号車と5号車のあいだは、車内での通り抜けができなかった。仮に分割編成のままだったら、容疑者を乗せた1~4号車が大パニックに陥る可能性もあった。

 次にホームドアが後づけ可能で、コストも削減できるハーフハイト式であったことだ。神戸新交通や東京メトロ南北線などで使われているガラス張りのフルハイト式だと脱出は容易ではない。仮にフルハイト式のホームドアで、今回と同様の事件、事象が発生した場合、列車を降りたあと、線路上を歩き、ホームへ向かう。この場合、脱出から避難まで相当な時間を要するだろう。

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