昇降式ホーム柵(C)朝日新聞社
昇降式ホーム柵(C)朝日新聞社

■非常用ドアコックのむやみな使用は危険

 今回の事件でクローズアップされたのは、非常用ドアコックだ。通常、各乗降用ドアの上、もしくは座席下に設置されている。主に非常事態が発生したときや、報道公開で使われるが、基本的には乗務員等が操作する。乗客でも操作はできるが、むやみに使わないほうがよいだろう。特に複線や複々線だと、後続や対向の列車にはねられる恐れがある。また、今回の事件は地下区間で発生したが、仮に駅と駅の間で停止し、非常用ドアコックを開けた場合、車内で発生した煙や炎が地下トンネル内に広がってしまい、負傷者が増える恐れがある。列車の走行中、あってはならない非常事態が発生したら、各車両に設けられている非常通報ボタンを押すか、運転士(ローカル線のワンマン運転時に限る)、もしくは車掌に直接知らせたほうがよいだろう。

■ホームドアはある程度の見直しが必要か?

 転落事故防止など安全性向上の一環として、1日の平均乗降客数10万人以上の駅を中心に、ホームドアの設置が進められているが、今回の事件で、「脱出」の面で課題を残した。今後、ホームドアの設置工事を行うのであれば、ホームドアと車両の間隔を広げることも検討してほしい。たいていの駅はホームドアと車両の間隔が大変狭い。東急電鉄は田園都市線宮前平に限り、ホームドアと車両の間隔が広い。設置当時、一部の車両に6ドア車が連結されていたため、ホームドアの位置を内側に寄せたためだ。非常事態が発生した場合、列車の停止位置が若干前後しても、列車の乗降用ドアとホームドアが開けられる。ただし、ホーム幅が実質狭くなることや、既設駅のホームドアの位置を内側に移動させる場合、工事が容易ではないデメリットもある。

 JR西日本東海道・山陽本線の一部駅、JR東日本成田線の空港第2ビル、成田空港駅などでは、どんな車両にも対応できるよう、昇降式ホーム柵を設けている。列車が到着するとロープが上がり、発車前にロープが下がる仕組みだ。フレキシブルに対応できることはメリットだが、列車の停止位置が前後した場合、乗降用ドアと柵の土台が重なるデメリットもある。

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