都心ではヘルメットをせずに自転車に乗る人が多い(C)朝日新聞社
都心ではヘルメットをせずに自転車に乗る人が多い(C)朝日新聞社

 新型コロナウイルスの感染拡大による巣ごもり需要でフードデリバリーサービスの自転車が街を疾走するようになり、密を避けるために職場へ自転車通勤する人も増えた。が、実は自転車に乗る際はヘルメットを着用するとの努力義務を定めた法律や、各地の条例がある。「なかなか世の中に浸透しない」(自転車業界関係者)というルールのようだが、都道府県によっても温度差があることがわかった。

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 東京23区のあるバス通り。テレビCMでもおなじみのフードデリバリーサービスの自転車が次々と通り過ぎる。ヘルメットをかぶっている配達員もいるが、かぶっていない人も多い。

 実は東京都には、「自転車安全利用条例」というものがあり、全世代に対してヘルメット着用の努力規定を設けているほか、18歳未満の子を持つ親や保護者に対し、子にヘルメットを着用させる努力をするように定められている。また、65歳以上の高齢者の親族や同居する人は、高齢者にヘルメット着用などを助言する努力をするよう定められている。罰則はない。

 配達員の男性に声をかけると、「暑い真夏や走る場所で、かぶるときとかぶらないときがありますけど、それ(条例)は知らないです。なんでって……車の速度違反とか駐禁みたいに罰則がないと、わざわざ知ろうっていう機会がないんじゃないですかね」

 都条例だけではない。こちらも実はというべきか、2008年に道路交通法が改正され、13歳未満の子供がいる保護者は、子供と2人乗りする際、また子供が一人で自転車に乗る際は、ヘルメットをかぶらせるように努めないといけない「努力義務」が設けられた。罰則はない。

 実は、と書くには理由がある。

 自転車ヘルメット国内シェア1位の「オージーケーカブト」(大阪)が2019年に行った調査では、10歳までの子を持つ保護者約2万5000人のうち、この法律を「詳しく知っている」と答えた人はわずか9.5パーセントにとどまった。「知らない」が50パーセントを超え、「聞いたことがある程度」が約40パーセントと、法施行から10年以上がたっても周知されていない実態が浮き彫りになった。

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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