JR千駄ヶ谷駅付近に貼られていたビラ(写真/國府田英之)
JR千駄ヶ谷駅付近に貼られていたビラ(写真/國府田英之)

 近隣の飲食店が、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う休業要請に対する協力金を1400万円受け取った、などと根拠のない“中傷”が書かれたビラが、都内各地で見つかっている。協力金では足りず、経営に苦しんできた飲食店からは怒りと悲しみの声が漏れるが、こうした“中傷”ビラに違法性はないのか。

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「飲食店の協力金1400万」と太字で大きく書かれ、その下には「1店舗に1400万円 あなたの家の近くの店も既にこの金額が税金の協力金で支払われてます 毎月120万以上の協力金」などと記されたビラが見つかっているのは、東京都渋谷区のJR千駄ヶ谷駅の近くや品川区のJR大崎駅の周辺など都内の複数の町だ。公道の電柱や掲示板などに貼られており、金額が「1500万円」と書かれたものもあったという。

 大半がすでにはがされているが、10月中旬にまだビラが残っていた千駄ヶ谷駅近くに住む60代の住民女性は語る。

 「梅雨の時期にはなかったはず。最初に見つけたのは7月中旬か下旬ごろだったか……。私が見ただけでも電柱などに何カ所か貼られていて、誰がやったのかと近所では話題になっていました。こんなのお店の人が見たらかわいそうだし、私も嫌な気持ちしかしない」

■悔しくて泣きたくなる

 千駄ヶ谷駅周辺にある居酒屋の男性店員は憤る。

「協力金をもらえない仕事の人がいることを考えたら、我々は感謝しなくてはいけないけど、儲かったかのような書き方はひどいよね。金額だってなんの根拠があるのか。そういう店もあるだろうけど、家賃や人件費を協力金で補えず赤字に苦しんでいる店だってたくさんありますから。世の中が変わってしまって、お客さんが昔みたいに戻ってきてくれるか、これからが正念場という時になんでこんなものをわざわざ貼るのか。腹も立つし悔しくて泣きたくもなりますよ」

 ビラの内容は特定の店を名指ししてはいない。また、千駄ヶ谷でビラが残っていた場所のそばには飲食店はなかった。内容に具体性がなさそうにも映るが、このビラに法的問題はないのか。

 鈴木まり弁護士(弁護士法人クローバー)は、まずは他人の所有物に無断でビラを貼る行為が軽犯罪法違反に当たる可能性を指摘したうえで、書かれている内容についてはこう解説する。

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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