炎柱・煉獄杏寿郎(画像は「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」公式パンフレットより)
炎柱・煉獄杏寿郎(画像は「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」公式パンフレットより)


【※ネタバレ注意】以下の内容には、映画、今後放映予定のアニメ、既刊のコミックスのネタバレが含まれます。

 10月10日、『鬼滅の刃』アニメ2期のスタートを飾る作品として、テレビ版オリジナル「炎柱・煉獄杏寿郎」が放送される。そこで注目したいのが煉獄杏寿郎の「表情のちがい」である。劇場版と原作コミックスでは、ところどころで「煉獄の表情」が異なり、彼の苦悩や悲哀に“あるニュアンス”が加えられていた。特に煉獄の大きな特徴である「目」の描かれ方は、鬼滅ファンの間でも話題になることが多い。ここでは、表情のちがい、特に目の描写に注目して煉獄の“心のうち”を考察してみる。

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■原作に忠実な劇場版・アニメ版の作画

 「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は、炎柱・煉獄杏寿郎(れんごく・きょうじゅろう)の戦いが、物語の中心をなしている。

『鬼滅の刃』は、劇場版もアニメ1期も原作を忠実に再現していた。それが、鬼滅の劇場版とアニメ版の評価の高さにつながっていることは間違いない。劇場版「無限列車編」のラストを飾る、煉獄と母との邂逅シーンは、原作の感動がそのままよみがえる名場面となっていた。

 しかし、劇場版の煉獄の「表情」は、全場面が「原作そのまま」というわけではなかった。この劇場版ならでは「表情」の見せ方は、「煉獄の魅力」の多面性を描き出しているのだが、原作版とは具体的にどう違うのだろうか。

■劇場版「無限列車編」に加えられたシーン

 劇場版の煉獄杏寿郎は、鬼殺隊の最高位である「柱らしさ」が、全面的に押し出されている。そして、彼の「長男らしい」優しさ、「ヒーローらしい」カッコよさが、オリジナル場面の挿入によって、効果的に強調されている。

 無限列車編では、柱である煉獄を中心に、炭治郎(たんじろう)と禰豆子(ねずこ)、伊之助(いのすけ)、善逸(ぜんいつ)らが鬼と戦う。

 映画の冒頭では、煉獄が炭治郎に対して、まるで弟に話しかけるように、自分の隣の座席をトントンとたたき、「ここに座るといい」と優しく話しかけるシーンが挿入されている。「長男気質」が特徴づけられている炭治郎が、自分よりも「兄らしい」煉獄にうちとけていく様子が描かれる。

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植朗子

植朗子

伝承文学研究者。神戸大学国際文化学研究推進インスティテュート学術研究員。1977年和歌山県生まれ。神戸大学大学院国際文化学研究科博士課程修了。博士(学術)。著書に『鬼滅夜話』(扶桑社)、『キャラクターたちの運命論』(平凡社新書)、共著に『はじまりが見える世界の神話』(創元社)など。

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劇場版だけに追加されたオリジナルシーン