かまいたち(C)朝日新聞社
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 現代のお笑いネタの二大ジャンルと言えば、漫才とコントである。お笑い界では、ここ20年近く漫才がコントよりも強い時代が続いていた。漫才の方が人気があって注目度も高かった。

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 そんな「漫才高、コント安」の時代が始まったきっかけは、2001年にスタートした『M-1グランプリ』である。始まった当初はそれほど注目されていなかったが、回を重ねるごとに視聴率も上がり、多くの人に熱狂的に支持されるようになった。今では年の瀬の風物詩として定着している。

『M-1』が盛り上がったことで漫才という芸の面白さが広まり、漫才師は格好良いという価値観が生まれ、漫才が一気にメジャーなものになった。多くの芸人志望者が『M-1』を見て漫才師に憧れ、お笑いの門を叩いた。

 しかも、漫才は役柄を演じることなくしゃべりだけで構成される芸であるため、素のキャラクターが求められるテレビの世界と相性が良かった。漫才が面白い芸人はテレビでも即戦力であると思われた。実際に、多くの漫才師が漫才ネタで注目されたのをきっかけにテレビでも売れっ子になっていった。

 一方、コントは長らく不利な立場に置かれていた。2008年にはコントの大会『キングオブコント』も始まったが、『M-1』に比べるとやや認知度が低いままだ。

 コントは一種の芝居であるため、そこで演技をする技術がバラエティ番組で素の自分として振る舞う技術に直結していない。そのため、「『キングオブコント』で活躍してもテレビで売れるとは限らない」などとまことしやかにささやかれてきた。『M-1』に比べると『キングオブコント』から出てきてテレビタレントして成功を収めたような芸人は少ない。コントは漫才に比べると地味で報われないものだというイメージがあり、漫才ほど世間に求められていなかった。

 だが、最近になって、コントが少しずつ注目されつつある。例えば、10月16日からはフジテレビの『新しいカギ』というコント番組が土曜夜8時に放送されることになる。チョコレートプラネット、霜降り明星、ハナコの3組が中心となって本格的なスタジオコントに挑んでいる。この時間帯はかつて『オレたちひょうきん族』『ウッチャンナンチャンのやるならやらねば!』『めちゃ×2イケてるッ!』などが放送されていた伝統ある枠である。フジテレビの伝説的なコント番組の正統な後継者として期待がかかっているのだ。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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