補助金を受けながらも、患者を受け入れない状況について、医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏は「厚労省のもともとの制度設計に問題がある」と指摘する。厚労省は補助金給付の要件に、「コロナ患者の受け入れ」を入れていない。そのため実際に患者を受け入れていなくても補助金が入る仕組みになっているという。

「通常の補助金であれば、患者の受け入れなどの実績があって、お金を出す形になります。しかし、厚労省がコロナ患者の受け入れ体制ができていないという批判を受けて病床確保の数だけを追求した結果、患者を受け入れなくても補助金を出す制度になった。その結果、実際には稼働できない病床ができた。民間病院はギリギリの医者、看護師しか持っていないから限界があります。本来であれば、国立病院や、尾身茂氏が理事長を務める、独立行政法人のJCHO(地域医療機能推進機構)の病院が患者を受け入れる話ですが、そこも受け入れに消極的で補助金だけを受け取る状況になっている。そんな中、民間病院で積極的に受け入れるなんて話になるはずがありません」

 医療がひっ迫する中、未だに1万1千人以上いる自宅療養者を置き去りにするようなことがあってはならない。

(AERA dot.編集部・吉崎洋夫)

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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