早稲田実業時代の清宮幸太郎 (c)朝日新聞社
早稲田実業時代の清宮幸太郎 (c)朝日新聞社

 雨での順延も目立つが、そんな中でも熱戦が繰り広げられている夏の甲子園。過去の大会では、新聞の見出しになるような大胆発言を連発し、“ビッグマウス”と呼ばれた球児たちもいた。

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 その代表格が、1997年の準優勝投手、平安(現龍谷大平安)のエース・川口知哉だ。

 大会ナンバーワン左腕と注目されていた川口は、京都大会の時点から「全試合二桁奪三振で完封」を宣言。ビッグマウスは、ほとんど不可能と思える目標をあえて口にすることによって、自らを奮い立たせる手段でもあった。

 甲子園でも、2回戦の高知商戦で、当時2年生だった藤川球児との投げ合いを制し、見事公約達成の11奪三振&2安打完封勝利。試合後のお立ち台で次の目標を聞かれると、「完全試合ですね」と言い切り、インタビュアーをタジタジにさせた。

「完全試合達成?ミエを切っただけですよ」と笑い飛ばした川口だったが、3回戦の浜松工戦では、2回に三ゴロエラーの走者を許し、パーフェクトこそ途切れたものの、4回までノーヒットノーランに抑え、あわやと思わせた。

 だが、3対0の7回に3連打で2点を失い、終わってみれば、冷や汗ものの辛勝。試合後は「ちょっと調子に乗り過ぎましたね」と反省しつつも、「次の目標?あまりえらそうなことはもう…。『完封』にしておきます。完封だって毎日できるものじゃないですよ。向こうも人間、僕も人間、機械みたいにはいかないですよ」。トーンダウンしても、コメントの面白さは群を抜いていた。

 巨人・長嶋茂雄監督も「彼はビッグマウス?それは面白い。プロ向きだね」と興味を示し、「大きくなって皮が剥けて陽の目を見れば、テクニック的には最高でしょう、ハイ!」と文字どおり“珍エール”を贈るほど。この発言を知った川口も「オレって、そんなにすごいのかなあと思いました」とご機嫌だった。

 決勝では4連投の疲れから智弁和歌山に3対6で敗れ、「僕は準優勝で終わるのは嫌ですから」の願いは叶わなかったが、一夜明けると、川口は「ようやく自分たちがやったことの大きさがわかりました」と大物らしい感想をもらしている。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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川口に劣らぬビッグマウス発言をしたのは?