しかしこれらの調査結果は、新型コロナ感染症が流行する前。昨年3月の緊急事態宣言に伴う「全国一斉休校」で、状況は悪化したという。かつてない長期間の休校で、外出は自粛。子どもたちのゲーム依存度が高まるのは当然のことだった。「ゲームは一日2時間まで」などと決めていたルールが、いつの間にかなし崩しになってしまったという家庭も、多いはずだ。

■ ネットに制限をかけられて逆上

子どもが親の目を盗んでゲームするのはよくあること。しかし、そこからどのようにして、日常生活や人間関係に支障が出るほどゲームに執着するようになるのか。愛子さんの息子のケースは一例に過ぎないが、順を追ってみていこう。

愛子さんの息子は、私立の中学校に通っていた。両親は息子が小さいころから過干渉気味で、受験をさせたのも「将来苦労しないように」という親心からだったという。

小学4年生から受験のための塾に通い、無事志望校に合格。しかし、いざ入学してみると勉強についていくのが大変で、ほどなく不登校になってしまった。

家にいる時間が長くなると、息子はゲームにはまり始めた。熱中すると昼夜逆転になって夜中までゲームをし続け、しまいにはヒートアップして大声で暴言を吐くように。そんな息子に、両親は再三注意をした。しかし共働きのため、日中は息子の行動をコントロールできなかった。

そのうちに息子は、「学校に行くから、ゲームに課金させてくれ」と要求するようになった。

なんとか学校に行ってほしい愛子さんは、息子の要求に応えて、何度も課金。しかし不登校はいっこうに改善せず、ゲーム依存はエスカレートするばかり。たまりかねた両親は、ネットに制限をかけようとした。

息子の家庭内暴力が始まったのは、それからだ。

息子は手当たり次第に物を投げつけ、テレビを壊し、家具を倒し、壁に穴をあけた。テレビは5~6台買い換えたという。両親は、息子の暴力をやめさせるために、お金を渡しつづけるしかなかった。息子はさらに、親のクレジットカードを勝手に使ったり、家の金庫から盗んだりするようにもなっていった。

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両親ではどうにもできなくなった