カルト宗教の側から、いくらでも説明(というかごまかし)が語られたからです。

 陰謀論も同じです。どんな言い方をしても、陰謀論側から反論が生まれます。

 最終的には、フェイクニュースをでっちあげればいいのですから、どんな論理的説得も論破できるのです。

 カルト宗教も陰謀論も、論理的に説得しようとすることは、それを信じている人の不安と淋しさを増幅させるだけだと僕は思っています。結果的に信仰を強化することにはなっても、洗脳が解ける可能性は少ないでしょう。

 カルト宗教から脱会させる一般的な方法は、まずは、カルト宗教と具体的に距離を取ることです。

 カルト宗教に友人を奪われそうになった時、まず、僕がしたのは、友人を具体的に宗教団体から離すことでした。

 カルト宗教側は、団体から離れることのマイナス面を熟知していますから、なんとかして信者を取り戻そうとします。団体で共に生活している限り、「使命感」と「充実感」を与えることができると確信しているからです。

 ここが、陰謀論との違いです。

 陰謀論がやっかいなのは、カルト宗教のように、「教会本部」という「離れる場所」が明確ではないことです。

 じーこさんが書かれるように、SNSを通じて、いつでも信者はアクセス可能なのです。

 ただし、カルト宗教と違って、陰謀論の場合は、陰謀論から離れようとする人を見つけ出し、連れ戻そうとする激しい動きは基本的にはない、と言っていいでしょう。

 ただし、陰謀論を信じる人達が集まり、集団を作り、共に活動を始めてしまうと、カルト宗教と同じになります。

 SNSでつながるだけではなく、現実の世界でも共に活動するようになると、陰謀論の世界から離れるのは、とても難しいんじゃないかと危惧します。

 アメリカで議事堂を襲撃した人達の中には、ネットで出会い、現実でもつながったグループが多かったはずです。

 そもそも、カルト宗教も陰謀論も、「充実感」を獲得するためには、「他人」が絶対に必要になります。

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他人に熱心に「独特の世界観」を説く背景には…